Revueの日記

Revueの日記

歌詞の解釈やライブレビューなど、好きな音楽の話を主に書いていきます。Mr.Childrenが中心になると思います。

【andymori】誰にも見つけられない星になれたら

 

1stアルバム収録曲。

例えばミスチルは「輝く星になれたら僕らはつながっていける」と歌いますが、この人達は「ぼかぁ勝手に輝きますよ」という感じ。

 

曲の質も、歌の魅力も、見た目のバランスも抜群だったのに。andymoriが売れないなんて日本の音楽業界は腐ってるぜ!という見方もできますが、この曲を聞くとやっぱり、「他者と共感してしまうこと」を避ける気持ちがはっきり出ている。自分の表現を守るために、世間に一歩踏み込むことを拒んでいた、というのはその後の彼らの活動を見ても分かると思います。

 

小山田さんの歌は、いつも万物を包む「夜」がやってくる。あるいは「夕方」、焦燥感と共に、今のうちに何か叫ばなくちゃ、と刹那的な生命力を爆発させる。

 

でも、どうやったって夜が来るのを止めることはできない。その諦観というか輪廻感というか、達観したような孤独を歌っている。まさしくメメント・モリでもありますし、1stの5曲目という謎タイミングで「ハッピーエンド」を持って来る辺り、もうこれは彼に染みついた人生観なんだろうなと思います。

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【誰にも見つけられない星になれたら】

 分かって欲しいけど、分かった気になって欲しくない 

ところで君の音楽の趣味の
少し偏屈なところが好きだった
誰にもわからないようなsweet spot
ほんと時々教えてくれただろう
in the night lovely night

色んな人が色んな音楽を聴いて育ってきて、それぞれが偏屈なスイートスポットを持ってると思うんですが、「分かって欲しい」という共感への欲望と、「この感情がお前に理解できるわけねえ、分かろうとするんじゃねえ」という気持ち。そのせめぎ合いこそが表現活動の根底にあるんだろうなあと思います。めんどくさいです。椎名林檎も「教育」リリース時に似たような話をしていた(気がする)。

この歌詞ではこうした主題を示しつつも、一応2人が感情を共有できています。「ところで」は本筋じゃないんだけど、という照れ隠し?

 

かわいい水パイプで吸い上げた
やさしさひとつ身につけられないで
アイラビューベイビーなんて歌っているから
窓の外ダイブしたくもなるんだよ
in the night lovely night

と思いきや、中身のないアイラビューへの申し訳なさが告白されます。前段のスイートスポットの共有も怪しいもんだ、と示唆しているようにも思えます。

水パイプは一本のチューブを回して吸ったり、同時に複数の人が吸ったりして同じ煙を共有するもの。他人と一緒に吸い上げた感情を吐き出してるようでいて、あくまで個人的で上辺だけのものでした、「すんません、共有できてません」ってことかと思います。

 

誰にも見つけられない星になれたら
誰にも見つけられない星になれたら
この夜に in the night

結局、自分の言いたいことは言うけど、理解されなくてもいい。アイラビューな歌を否定している手前か、サビではlovelyが取れた「普通の夜」になっています。

 

コーラの瓶は残されて
一人だけで夏を気取ってるよ
僕も君も取り残されていったい
なにを気取っていたんだろう
in the night lovely night

孤独を気取った結果、君も僕も周囲から浮いて滑稽に見える。

 

いつも通り夜はやってきて
君と僕も離れ離れだよ
誰にもわからないようなsweet spot
あの彗星に連れて行かれたよ

最初は繋がって見えた2人も「いつも通り」夜になれば孤独だし、互いの星の輝きも見えなくなる。

彗星は、自分がその場にとどまる限り周期的に何度も訪れ、こっちの輝きをかき消してくる。絶望がループしてくるような、一種の宿命や運命の喩えなのかなと思います。闇に飲み込まれるのではなく、強い他者の光で自分の存在が連れて行かれる、という表現が繊細だなあと思います。

 

小山田さんがこんな人間の運命を肯定しているのか、否定しているのか、この歌では結論は良く分かりません。完全に言いっ放しなつぶやきです。まさしく誰にも理解されない歌になっています。

 

それでも、この子供っぽさも彼らしいなあと思えて、たまに聞きたくなる小品って感じで好きな曲です。

 

なお、この曲へのアンサーが、解散前の新曲「それでも夜は星を連れて」なんだと思っています。

それでも夜は星を連れて
何でもない顔して 旅に誘うよ
トランクの中には 四ツ葉のクローバー
この風が吹くならば
君と歩いて行ける

夜だからこそ星が輝くのかもしれない。孤独の中でも輝いていたい。「革命」前の風が吹くならば、君と歩いてきた道をこれからも、暗闇に包まれようと進んでいける。

 

andymoriが幸福なバンドだったのかは分かりませんが、いろいろな活動を経た小山田さんの精神的な足跡(成長と言っていいのか…?)がにじむ歌詞だと思います。