Revueの日記

Revueの日記

歌詞の解釈やライブレビューなど、好きな音楽の話を主に書いていきます。Mr.Childrenが中心になると思います。

【Foo Fighters】ヒーローのいない時代の音楽 Concrete and Goldレビュー

 

 ※今アルバムラストの「オチ」、映画「ファイトクラブ」のオチに言及しています。 

 

Foo Fighters - "Concrete and Gold"

 【総論①】 作り込んだごった煮

2017年9月15日発表。できたてほやほや。Foo Fighters9枚目のアルバム。

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デビュー以来常に進化を続けてきた彼ら。7th「Wasting Light」はガレージで録音、〝本来の〟ロックを追求したかと思えば、8th「Sonic Highways」では全米の音楽の歴史とフーファイサウンドを融合させつつドキュメンタリーまで同時進行で撮ってしまった。

 

ある意味「企画物」だった過去2作に対して、今作は「普通に録音するのも久しぶり」という発想から、スタジオで作り込んでいる。今のフーファイの「普通な」アルバム、果たしてどんな音が鳴っているのか、純粋に楽しみでした。

 

完成に至る経緯は公式動画に詳しいです。

Foo Fighters - The Making of Concrete and Gold - YouTube

The Bird and the Bee*1のグレッグ・カースティンに惚れ込んで彼にプロデュースを頼み、これまでにないラウドな音作りに成功した。古今東西数多のアーティストが利用してきたハリウッドの有名スタジオEastwest Studiosで録音し、デイブの顔の広さも生かしてスタジオを訪れた色んなスターが参加している。

 

バードアンドザビー的なポップな仕上がりになっているのかと思いきや、全然そんなことはなく、フーファイのバンドサウンドを時にヘビーに、時にサイケにアレンジして見せている。従来のストレートな音作りからすると新しい、あえて言えば分かりにくい。

 

本人達の表現で言うと「スレイヤーがPet Soundsを作ったら」「モーターヘッドがサージェントペパーズを作ったら」。ごりごりでスマート、ど直球でひねくれている、ごった煮感あふれた作品になっています。

 

本編ラストの「Concrete and Gold」は目指せピンクフロイドだったそう。彼らが続けてきた「ロックの温故知新」な姿勢の新境地という評価はできると思います。

 

従って、昔のような「アップテンポに流れるようなボーカル・美メロ、ポストロックの申し子」な(Monkey Wrench的な)フーファイを期待すると大いに肩すかしを食らう。ロック的な不安定さ、不確実さ、未完成さではなく、しっかり作り込んでおり、スロウな曲も多い。

 

歌詞に目を向けると、これはデイブ自身も語っていることですが、明らかにトランプ政権への不安、アメリカ社会への不安を歌っている。分かりやすく政治的な曲もある。

 

こうして見るとフーファイもいよいよ成熟路線か、丸くなって来たか、なんて感じそうですが、デイブらしい「90年代感」はばっちり入っています。そういう意味で、サウンド面の変化はありつつも、フーファイらしさが強く出た作品だと思います。

 

【補論①】私の思うフーファイらしさ

「90年代感」。90年代オルタナティブロックの代表格とされる彼ら。

オルタナとはなんぞや、という議論をし出すと長くなりますが、私流に90年代の文化を大雑把にまとめるなら、それはやはりポストモダンの時代なんだと思います。

 

冷戦が終わって、大きな物語が終わった。CDが普及して、個人消費が進んだ。みんなが一つの想いを共有しなくなった代わりに2次創作が増えた。そして何より、かつてのような「時代を背負うスター」が生まれなくなった。

 

名盤とされる音楽は昔にしか存在せず、ロックは80年代の商業主義に飲み込まれていて、黄金時代なんてとうに終わっている。そうしたメインストリームへの反動から生まれたパンクに色んなジャンルをくっつけて生まれたのがオルタナ。ある意味過去の栄光の残りかすを適当に食べながら、そんな時代を、自分自身を皮肉ったり自嘲したりするのが90年代なんだと思います。

 

カート・コバーンという「スター」の喪失から生まれたフーファイターズ=デイブ・グロールは、まさに90年代的な「自嘲と相対化」を内在化しながら活動してきたアーティストです。常にニルヴァーナの陰を背負いながら、自分がどう見られているかを理解しながら、それでも自分らしい表現を選んできた。

 

そうやって目の前の活動を一つ一つ積み重ねるうちに、いつしかフーファイはオルタナ=非メインストリームから、アメリカンロックの大家へと立場を変え、スタジアムの観衆を相手にするようになってきました。ニルヴァーナ時代を知らないファンも増えてきた。

 

自身を取り巻くシーンが変化する中、Wasting Lightでデイブは、彼の90年代性の集大成として「過去を顧みながらも前を向く決意」を歌って見せました。

 

その先に目指すのは、ヒーローなき相対化の世界、ポストモダンの時代でいかに「ロックスター」らしくいるか。過去の遺産を時に吸収し、時に乗り越え、今の時代に響く音楽を求め続けること。

 

Wasiting Lightで一種のみそぎを済ませたデイブは、Sonic Highwaysからそうしたモードを本格化させているんだと考えています。そのスタート地点として、アメリカの音楽の歴史を掘り下げる所から始めるのは姿勢としてすごく正しいと感じました。*2

 

【補論②】Sonic Highwaysへの不満

ただ、私には前作はちょっと物足りなかった。要は「音楽的に真面目すぎないか」ということです。

 

換言すると、本当にフーファイはオルタナではなくなってしまったのか。王道であることを受け入れたフーファイはもはやフーファイではないんじゃないか。こんな疑問が沸いてくるのを止められなかったのです。

 

厳しい見方をすれば、前作は90年代らしい自嘲や自分を相対化してみせるユーモアを欠いていた。音楽的には格好いいけれど、バンドの方向性に不安を感じたわけです。

 

【総論②】非主流のスター像

結論から言うと今作「Concrete and Gold」は、私が前作に感じたそうした物足りなさに対し、ばっちりとした回答をくれた作品でした。ロックが社会の中心になり得ない今の時代に、非常にフーファイらしいロックスター像を提示していると思います。

 

今作にはメインストリームではないロックの叫びが詰まっている。政治的な歌詞と同時に、自分自身はどうしようもない存在だという視点、そして「結局は現実を見ないといけない」という自戒の念も込められている。

 

インタビューによると、デイブはSonic Highwaysのライブ中に骨折して「玉座」(車いす)に頼りながらライブを続けましたが、やはりツアーを終えた後は心身ともにぼろぼろになってしまったそうです。

怪我を癒すために家に引きこもり、テレビを付けるとそこには泥沼の大統領選が。怪我のブランクで薄れた創作の勘を取り戻すのに苦労しつつ、酒の力も借りながら独り部屋の中であーだこーだと叫びながら今作の原型はできあがっていったそう。完璧な中のもろさとか、デイブの当時の不安定性が素直に歌になっている。

 

そういう意味で今作はSonic Highwaysから一歩進んで、一方でスターとしての完璧さを目指しつつも、もう一方でルーツであるオルタナ性が戻ってきたように感じるのです。

 

そこがファンとして嬉しいし、フーファイが「世界的なスター」と「オルタナティブロックバンド」という両面から「健全に」進歩し始めた、新たなステージに入ったんじゃないかと感じます。

 

非常に象徴的なのがシングル「The Sky is A Neighborhood」のMV。

 

  

2人の子どもが小屋に捕らわれている。空に輝く無数の星は文字通り過去に消えていったスター。小屋と空の中間で、自らも星の様に輝きながら歌い、子どもを解放するフーファイの面々。

 

MVは最後に夜空から光が射し、デイブに注ぐところで終わります。彼らのいた空間もまた一つの小屋だったというオチです。Sonic Highwaysの「納得感」「終わった感」ではなく、「未完成」という90年代性がユーモアと共に戻ってきたのを感じます。

 

最近ライブでRick Atstleyの80年代キラキラポップ「Never Gonna Give You Up」をSmells like teen spiritパロディのアレンジで演奏しているのも、「90年代的な適当感」という、同じ流れとして捉えられると思います。

 

【各曲レビュー】引用和訳はアルバム付属のもの。引用外の訳は自己流です。

T-Shirt

静かな個人的つぶやきが音楽的装飾で一気に飛躍、スケール感が増した後、また個人の視点に帰るという3部構成。音作り的にも歌詞のテーマ的にも今作らしさが凝縮された曲です。最初のぶっ飛びポイント、初聴時はクイーンかと思いました。

I don't wanna be king
I just wanna sing a love song

There's one thing that I have learned
If it gets much better, it's going to get worse
And you get what you deserve

後半の歌詞はオバマにまでデイブ自身がインタビューした幸せなSonic Highwaysからの落差を歌っている気もします。批判しつつも、こんな社会になったのは自分自身のせいだと小さく歌う。

 

Run

先行シングル。リフもののロックをずっと作ってきたデイブと、グレッグ・カースティンの「音響」(と言えばいいのでしょうか…)が組み合わさって生まれた新境地。ライブ映えすること間違いなし。

The rats are on parade

Another mad charade

What you gonna do?

ネズミどもは総出でまたしてもクレイジーな芝居を打ってる

さあ どうする?

どう見ても選挙だよなあ、という感じ。 

You can stay asleep If you wanted to

They say that's nothings free

You can run with me If you wanted to 

おまえは寝てたきゃずっと寝てればいいさ

タダで手に入るものなんて何もないと言うけれど

お前がその気なら 一緒に逃げることだってできるんだぜ

We are the nation's stakes

If everything's erased

What you gonna' do?

I need some room to breathe

You can run with me

If you wanted to

国家の杭=国民?息する余裕もない、というのはアメリカ社会の雰囲気か。

Before the time runs out

There's somewhere to run

Runという言葉に自分の社会に対する逼迫した危機感が出ていると思う、とデイブ。全体の歌詞には政治的なメッセージだけでなく、「限られた命を生きる」というデイブの人生観も込められていると思います。

 

Make it right

シンプルなギターロックです。①~②で革命を呼び掛けるかのごとく世界観がぐわーっと広がったのに対して、この曲は歌い手自身に鋭い目線を向けるアクセント的な役割を果たしています。

I don't fuckin' need, I don't fuckin' need
I don't need a martyr
Who's it gonna be? Who's it gonna be?
Gonna be another

殉教者なんていらない。次は誰だ?混乱の社会の中で出口を求める。

 How you gonna make it right?

「お前、本当にやれるのか?」って感じに聞こえます。

ジャスティン・ティンバーレイクがコーラス参加していますがクレジットされていません。紹介動画でもそうですがネタにされてる感。

 

The Sky is A Neighborhood

子どもの頃から夜空を見るのが好きだったというデイブ。全ての物質は宇宙の星や塵と同質である。「人間は宇宙の一部であり、宇宙は人間の一部、と考えると感動する」とインタビューより。

重々しいドラム、足音を打ち鳴らすようなサウンドがRunとは真逆の「静的な衝動」を連想させます。そこからサビに入るとコーラスが重なって宇宙と繋がる感じ。で最後にはまた自分一人の世界に帰ってくる。1曲の中の緩急の付け方が面白い。

The sky is a neighborhood

自分と変わらない宇宙、とも解釈できるし、自分が死に近づいていることの暗喩とも取れる。

Heaven is a big bang now

Gotta get to sleep somehow

Bangin' on the ceiling

Bangin' on the ceiling

Keep it down

混乱の象徴としてのビッグバン。

Mind is a battlefield

All hope is gone

Trouble to the right and left

Whose side you're on?

全てが一つのはずの世界に対して心が戦場になっている。個人の認識の違いが世界を混乱させている、という意味でしょうか。右と左、どちらに付くか。

 

La Dee Da

昔ながらのフーファイロック。

Turn up the American ruse

Psychic Television and Death in June

Jim Jones painting in a blue bedroom

Whitehouse、Death in June、 Physic TV。非常に実験的だったり暴力的、政治的だったりしたロックバンドの名前が列挙されている。American Ruseは同系統のMC5というバンドの曲名。さらにはカルト宗教の教祖であるジム・ジョーンズの名も。昔のインタビューでデイブは「ティーンの頃ジム・ジョーンズに陶酔していて絵を描いて飾っていた」と話しているのでそのまんまかと。

 Keep your pretty promise to yourself

あんたの可愛い約束事は胸に秘めておくといい

時代のメインストリームにいなかった「アンチヒーロー」に憧れた若い自分を、今になって受け止めようとしているように見える。 

 

Dirty Water

曲展開があっちにこっちに。ぬるっと始まって、次第に激しくなる濁流に飲まれる感じがします。ハリケーンの甚大な被害に対応しない政府批判、という解釈もあるそう。

I've been drinking dirty water
But I've been here before, after all

結局泥水を飲むような状況になっているのも現状肯定してきた自分のせい、というニュアンス?

I feel an earthquake coming on
I feel the metal in my bones
I'm a natural disaster
And you're the morning after all my storms

「自分は悲しみをまき散らす存在だ」と歌っているように聞こえる。

 

Arrows

冒頭から色んな音が繊細に鳴っていて、フーファイでは今まで聞いた事のない感じ。⑥から続く自分の内なる悲しさを解き放つよう訴える。

Arrows in her eye

Tears in her ateries

War in her mind

Shame as she cries

Fire away

瞳には矢 動脈には涙 頭には戦闘

泣くなんて情けないと思いつつ

攻撃を始めろ

I want a new life
Forming inside of me

自分の内なる悲しみから新たな可能性を生み出したい。

 

Happy Ever After(Zero Hour)

小休止。戦うように煽りまくった⑦から日常に帰ってくる。美メロでアコースティックでビートルズ感たっぷりの曲ですが、内容的には「ビートルズなんていない」と歌っています。

The sun went down on
Another perfect day
Busy counting shadows on the wall
The weeds are swallowing up
The flower bed
Roses in the whiskey jar
Blood on the thorns
Drink until the taste is gone

写実的な心情描写。誰かにとっての完璧な日が終わる。雑草が花壇を飲み込んでいる。花繋がりでバラを刺してあるウィスキーのボトル。つらい日常の中で酒に溺れざるを得ない。

Where is your Shangri la now?
Where is your Shangri la now?
Counting down to zero hour
There ain't no superheroes now
There ain't no superheroes
They're underground
Happy ever after
Counting down to zero hour

シャングリラはどこに行ってしまったのか。今はスーパーヒーローなんていなくなってしまった。みんな地面の下でいつまでも幸せな様子。zero hourは自分の死を意味するんじゃないかと思います。

死を持ってしか幸福になり得ない人生についてループで歌い続け、フェードアウトしていく。

 

Sunday Rain

その絶望的なポップスを断ち切るのがポールマッカートニーのドラムというアイデアが面白い。テイラーがボーカルを務めています。

この曲も何となくビートルズっぽい。個人的に今回のアルバム曲の中では一番好きです。

Don't leave me drowning in your Sunday rain
It's right down the drain I go
Don't leave me drowning in your Sunday rain
It's always a shame, oh no

君の日曜日の雨に溺れかけた俺を置いていかないでくれ

俺はお流れになる運命さ

いつだってつらいよ

Are you a little afraid?
A little alone?
A little exhausted?
Do you give it away?
Do you let go?
Where do you find it?

しんどさの中のストレートな心情吐露。

 

The Line

うちひしがれながらも何とか気持ちを立て直し、みんなの前で歌おうとする。聞き慣れたフーファイのバンドサウンドで、分かりやすい応援ソング。インタビューによると「全てと常に戦っているような今の時代に向けた歌」だそう。

Foo Fighters - The Line (Audio) - YouTube

Yes or no?
What is truth
But a dirty black cloud coming out of the blue?
I was wrong
I was right
I'm a blood moon born in the dead of night

片っぽを裁けないよな、ということでしょう。The sky is a Neighborhoodの歌詞と繋がっている。

Break my bones
I don't care
All I ever wanted was a body to share
Heart's gone cold
Brush ran dry
Satellite searching for a sign of life

自分の怪我をネタにしている気も。自分の体を媒介に命について歌っていく。

The tears in your eyes
Someday will dry
We fight for our lives
'Cause everything's on the line
This time

その瞳に浮かぶ涙は いつの日か乾くだろう

俺たちは命がけで戦う だって今度こそ全てが危険にさらされているから

非常にストレートです。on the lineは危険だけでなく、「良くも悪くも人々は繋がって影響し合う」という意味なのかも、と思います。

 

Concrete and Gold

ブラックサバスとピンクフロイドがくっついたような曲、だそうです。 Boyz II Menのショーンが参加。

I have an engine made of gold
Something so beautiful
The world will never know
Our roots are stronger than you know
Up through the concrete we will grow

俺には黄金でできたエンジンがある

実に美しいものさ

世界が知ることは決してないだろうけど

その根は思っているよりずっと強くて

コンクリートを突き破って

伸びていくんだ

固いコンクリートの地面(重苦しい現実社会)に埋まったHappy Ever Afterに向かって根を張る、力強い金色のエンジン。俺はまだまだやれるぜ、と。
 
 
そしてアウトロの美しいギターの残響が消えていき、沈黙…
 
 
 
からのデイブの叫び声。
 
(Fuck you, Darrell)
 
ダレルとは、今回録音を担当したダレル・ソープのことです。*3
 
今回の音の立役者を罵って終わるわけです。耽美的で美しい余韻をあえてぶち壊す。
 
これは単なる照れ隠し以上にいくつかの狙いがあるのかなと思います。
 
まず、音楽から立ち上がって現実を見ろよ、と聞き手のケツを叩く狙い。曲だけ聴いて満足するなよと。Runのメッセージとの繋がり。
 
また、「そんな格好いい台詞で今の時代終われないよ」という気持ちもあるでしょう。さんざん「スーパーヒーローはいない」と歌ってきたのに、と。
 
 
このぶち壊し、ちゃぶ台返しエンディングを聴いて私は1999年の映画「ファイトクラブ」のラストを思い出しました。
 
あの映画では、本編最後にある映像がサブリミナルで入ります。これによって映画全体が相対化され、観客は2時間以上ずっと真面目でシリアスな話だと思っていたのに、実はある男が裏で映像を操っていた「ブラックコメディ」だったと分かる。
 
ファイトクラブでは「画一化した社会への破壊衝動」という90年代的なテーマを非常に丁寧に描いているがゆえ、「こんな倒錯した時代にこんな真面目なメッセージ出せるかよ」と、自己矛盾に陥らないようあえて最後に全体を破壊しているのです。
 
デイブの台詞にはこの仕掛けと同じ臭いを感じました。つまり、「答えなんて無い」ことを前提に「それでも頑張るぜ」という歌を何とか紡いだ果てに、その姿勢すらもネタにするわけです。何がゴールドエンジンだよと。現実を見ろよ、と。
 
ロックスターであろうとする自分自身を「所詮普通の男だからなあ」と揶揄するデイブらしいユーモアであり、この一言でConcrete and Goldは完成するのです。
 
【総評】

全体の印象としては、サウンドの拡大に挑戦し、手堅く、少しずつ表現の幅を広げてきたと思います。彼ららしいユーモアやアイデアも感じますし、メロディも前作より良かった。ビートルズを持ち出したり、歌詞や曲調の緩急にも工夫を感じました。

 

冒頭で書いたように重々しい曲調が多いので、1stや2ndの感じが好きな人にはお勧めできませんが、私としては「Wasting Light」から始まったフーファイ第2章がようやく軌道に乗り始めたのかな、と好意的に楽しめたアルバムでした。

 

*1:完全に余談ですが、デイブと全く同様にミスチルの桜井さんもThe Bird and the BeeのAgain & Againに影響されてyou make me happyという曲を作っています。

*2:1曲目Something from Nothingでfarewell to yesterdayとした上でI've found a riverと歌ってアメリカ旅行に出発し、最後にはI am a river, I am your riverと締めくくる。

*3:この人もレディへやらベックやらものすごい経歴の持ち主。