Revueの日記

Revueの日記

歌詞の解釈やライブレビューなど、好きな音楽の話を主に書いていきます。Mr.Childrenが中心になると思います。

エレカシスペシャルライブに行ってきました。

2018年3月18日(日)

エレファントカシマシ 30th ANNIVERSARY TOUR "THE FIGHTING MAN" SPECIAL ド・ド・ドーンと集結!!~夢の競演~」

17:00~21:00@さいたまスーパーアリーナ

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400レベルから、遠目に見ておりました。

スピッツミスチルエレカシの順で、各1時間ずつ+アンコール。

立て続けに出てくるため、各バンドのキャラクターの違いがはっきりと見えて面白かったです。 

 
セットリストです。各楽曲の発表年を付記してみました。

スピッツ】1991年デビュー。

01. 春の歌 2005年

02. 恋する凡人 2010年

03. 8823 2000年

04. 初恋クレイジー 1996年

05. チェリー 1996年

06. 愛のことば 1995年

07. スターゲイザー 2004年

08. 浮雲男(エレカシカバー) 1989年

09. みなと 2016年

10. 涙がキラリ☆ 1995年

11. さわって・変わって 2001年

12. スパイダー 1994年

13. トンガリ'95 1995年

Mr.Children】1992年デビュー。
00. prologue 1997年
01. Everything (It's you) 1997年
02. HANABI 2008年
03. innocent world 1994年
04. 太陽ギラギラ (エレカシカバー) 1988年
05. and I love you 2005年
06. SE~here comes my love 2018年
07. himawari 2017年
08. やさしさ(エレカシカバー 冒頭のみ) 1988年
09. 名もなき詩 1996年
エレファントカシマシ】1988年デビュー。
01. RAINBOW 2015年
02. 奴隷天国 1993年
03. 悲しみの果て 1996年
04. 星の砂 1988年
05. 風に吹かれて 1997年
06. 笑顔の未来へ 2008年
07. 桜の花、舞い上がる道を 2008年
08. 風と共に 2017年
09. ガストロンジャー 1999年
10. 今宵の月のように 1997年
11. Easy Go 2018年
12. FLYER 2008年
アンコール
13. ファイティングマン w/スピッツMr.Children 1988年

各バンドが大きく名を上げた90年代中盤の選曲が目につきます。

以下、ミスチルファンの感想をつれづれ書いていきます。「格好良い」という言葉を連発しています。

 ▽バンドのスタンス

スピッツは、芯の通った演奏に包み込むような草野さんの声が溶けていく感じ。

エレカシは、宮本さんの歌唱がごりごりの演奏に全く負けず、むしろ突き抜けていく。

いずれも土台となるバンドの音が強い。質が高い。

一方のミスチルは、とにかく桜井さんの声が独特で、耳に刺さる。声と歌を伝えることに徹し、他の3人は引き立て役に回る。この差は明らかなだなあと。散々言われてきている彼らのスタイルですが、改めて独特なものを感じました。

 ▽盛り上げ方

「総合司会」を名乗りつつも、感情が溢れすぎて「このイベントの趣旨が分からない」などと、どっちらけになる宮本さん。歌が圧倒的なだけに、ギャップが強烈。

「早くスピッツと名乗らないと、分からない人もいるんじゃないかと」と低姿勢過ぎる草野さん。力まず、穏やか。

決して完全なホームではないのに、草野さんのような懸念は全く感じない様子でイヤモニを外してはサビを客に振りまくり、細かなMCも交えながら観客を引き込んでいく桜井さん。

SEの多用や、ステージを広く使ったパフォーマンスは、普段見慣れているため気にしていませんでしたが、エレカシスピッツと比べるとスタジアム慣れしたミスチルの個性なんだなと思いました。

 ▽太陽ギラギラ

昔からそうですが、自分たちの曲じゃなくなると楽器隊がぐいぐい前に出てくるのがミスチルの面白い所です。

エレカシのカバー曲「太陽ギラギラ」。

アレンジは、サイケでブルージーでどこかジャズっぽい。というと意味不明ですが、紫や緑の妖しげな照明演出含め、一言で言うとすごく「Qっぽかった」。ベースが曲全体を引っ張りつつ、サビで一気に爆発する感じはQの某未発表曲を連想。既発曲では蜃気楼が近いか。泥臭く、まとわりつくような歌唱はI Can Make itのようでもありました。

桜井さん流の照れ隠しなのか、エレカシのファンの方に向けて「トイレタイム」だと話していましたが、グルーヴィーなバンドと年相応の渋いボーカルの組み合わせで、今のミスチルの魅力が一番出ていた演奏だと思いました。桜井さんは「年明けからこの日をモチベーションに頑張ってきた」と話しており、相当練習したんだろうなと思います。演奏終わりには「エレカシ最高」と叫んでいました。

 

なお、ミスチルエレカシ愛のきっかけとなったエピソードもこの曲の前にMCで披露されました。

ミスチルは1988年にCBSソニーオーディションを受けるも落選。BOOMやすかんちが同じ最終選考に残っており、「地味」なことが落選理由だったそう。86年に同じオーディションを「もっと地味な」エレカシが通過したことを知っていた桜井さんは、勉強のつもりで彼らの明大学園祭ライブを見に行って魅了され、しばらく彼らの楽曲ばかり聞いていたそうです。「まだMr.Childrenになる前」だそうで、The Walls時代の話ですね。

▽原キー連発

演奏曲数が少なく体力的には普段より楽でしょうし、他のファンの方をがっかりさせない配慮もあったのか、どれも原曲キーでした。innocent worldは一部のサビは歌わせたものの、ほぼフルで歌い、HANABIも原キー。両方とも今後貴重になってくるのかもなあと思いました。正直ちょっとつらそうでした。

▽prologue

実は一番レア(ライブで使われるのは初?)。これも90年代への意識なのか。スピッツエレカシのファンの中にも、BORELO辺りまでは聞いてたという人は多いのでは、ということでしょうか。

▽and I love you~himawari

ホームじゃなくても今の自分たちの世界観は表現したい、というゾーン。どれもシングルでしたし、多少は気を遣っているのでしょうが。

and I love youのアレンジは未完ツアーとほぼ同じで、入りは田原さんのギターから。よく声が出ていました。最後は珍しくシャウト3連発。

そこからSE。WALTZや蜘蛛の糸が始まりそうな、なんとも言えない怪しい雰囲気でした。

初披露となるhere comes my loveはきっちりと原曲通りでした。太陽ギラギラの次に良かった。大サビ後のギターソロは桜井さんでした。

himawariは正直、弦があったらもっと良いのになあ、とも思ってしまいましたが、「邪に生きてる」→田原ギターソロ→「だから」の流れは何回聞いてもコテンパンにされます。

 

スピッツ

5年ほど前に一度見たことはあったのですが、やはり演奏・草野さんの歌の安定感が印象深いです。MC少なめでひたすら良曲を連発していました。

恋する凡人、ちょっと8823っぽい疾走感もあり、かわいらしさもあり、不思議な曲だと思いました。スターゲイザーが原曲よりややテンポ早めで、けれん味ある感じで格好良かったです。数々のシングル曲はもちろんですが、中でも三日月ロックは一番聴いていたので、さわって・変わってはテンション上がりました。8823で上がりすぎて演奏を放棄した田村さんに笑いました。

みなと。ちょっと音割れ気味で残念でしたが、透明感のある名曲だと改めて思いました。

エレカシ

だいたいのシングルは一応聞いた事があるがアルバムは全く持ってない、くらいのニワカです。生で見るのも初めてでした。

スピッツミスチルとは対照的にSE無しで入場。万雷の拍手、歓声に応えるようにぼそっと「どうも…」みたいなこと呟いてから、一気に歌い上げたRAINBOW→奴隷天国。それまでの空気を一変させる超攻撃的で格好良いパフォーマンスでした。

そのままの勢いで昔の曲がばーっと続き、宮本さんのMCへ。ミスチルはAAAで初めて生で見て、innocent worldで泣いたと。スピッツはロッキンジャパンで見て、1曲目だった涙がキラリ☆で泣いたと。今日もそれぞれ泣いたと。

契約が無い中で、技を盗むつもりでライバル達のアルバムを聞いたそうです。当時は若いバンドが出てきたと思ったけど、同じように年を重ねた今は近い年代に感じるようになった(との趣旨)の話もしていました。

その後もガストロンジャー→今宵の月のように等々、ニワカな私でも存分に楽しめる選曲でした。(エレカシファンの方からすると物足りなかったのかもしれませんが)

オレは右へ オマエは左へ

素晴らしい思い感じたら落ち合おう

最後の曲、FLYERの一節がしっかり自分の耳に飛び込んできて、とっても感動的でした。しかしまあ、宮本さんのパワー、表現力半端ないですね。力の調節具合というか。。

▽アンコール

ツアータイトルでもあるファイティングマンを3組で。見所が多すぎて、ひたすら楽しかったです。

演奏はエレカシスピッツ、歌は各ボーカル。ミスチルの楽器隊はダンス、タンバリン担当(!)

ボーカル組の真横で踊り狂うJENと、後ろの方で遠慮と笑顔が入り交じった様子のナカケー&田原さん。そう言えば、なぜ田原さんは本編で一人だけジャージみたいな格好だったのでしょうか。

曲が始まる前、ボーカルの3人が恐縮し合って互いに頭を下げてばかりの謎状況になっていたのも笑えました。同年代で長年意識し合いながらも、共演がほとんどなかった彼らの距離感が滲んでいました。

「歌が良かった」という言質を桜井さんから取ろうと詰め寄る宮本さん。「最高でした」とたたえながらも、宮本・桜井両氏のテンションに微妙に乗り切れない草野さん。それでも最後は3人肩を組んでの大団円でした。

 

とにかく、互いに対するリスペクトを強く感じた素敵なライブでした。何か思い出したら追記していきます。

【My Little Lover】evergreen 最高傑作

 

1995年12月5日発売の1stアルバム。累計280万枚近い彼ら最大のヒットアルバムにして、90年代J-POPの最高峰。全く古びておらず、タイトルに恥じない普遍性がしっかりと埋め込まれている。収録数は10曲と少ないですが、小林武史氏が練りに練り込んだ隙のないポップミュージックが広がっています。

 

先行シングルだった「Man & Woman/ My painting」「白いカイト」はいずれも50万枚超え。「Hello Again~昔からある場所~」は180万枚を超える大ヒット。デビュー当初は、音大生だったボーカルakkoとギター藤井謙二の2人組でしたが、今作リリースに合わせて小林氏も正式メンバーとなっています。*1

とにかく「良いポップス」がコンセプトなので、あまりご託を並べる余地がないユニットです。

 

一部の楽曲を除き、作詞作曲編曲を小林氏だけで担っています。

1. Magic Time

キーボードと打ち込み。浮遊感のあるギターに軽やかなストリングスとブラス。フィリーソウルっぽい。

静かな滑り出し。大きな展開はなく、この曲自体がアルバム全体のイントロ、カウントダウンという感じ。

まるでヴェールがかった 夢の向こうに
近づいてる 秒針の音が聞こえる

それは今 大好きな歌 乗せて走る
悲しみさえも ひきつれて どんな日常もぬけて

 

Magic Time

Magic Time

  • provided courtesy of iTunes

 2. Free

モータウンサウンド。小林氏は「自分の関わるアーティストについては、アルバムを買ってくれた人への感謝としてシングル級の曲を必ずアルバムに忍ばせる」と発言していますが、今作だとアレンジのクオリティ的にもこれかなと思います。

静かなMagic Timeの空気から一気に舞い上がるストリングスのイントロ。

失恋した女性が等身大の日常から宇宙にまでテンポよく視点を切り替えていく、その歯切れの良い切なさをakkoが軽やかに歌い上げています。

それはまるで パズルと迷路
あなたのせいで 空っぽになった心に 力をあたえて そして

自分のスタイルをもって 得意のスマイルいかして
あなたがいない私はFree

センチメンタルっぽいナンバーいっぱい並べてもおいて
一晩中泣き続けてもFree

と一番では強がっていた彼女ですが

セルフコントロールして 教えかなんかすがって
求める一人よがりのFree
でも本当は知ってるの 前から分かってたの
あなたがいなけりゃ ただのFree

Ah 神様 未来はどこにあるの

2番ではFreeが孤独の意味に。

好きなだけ抱きしめて
欲しいだけ求め続けて
昨日とか明日とかなくなるのがいい

大サビで「今さえ良ければ」と心が向いて、

社会全体の行く先も 宇宙全体の終点も
どこまでたどり着けるかもFree
LALALALAって夜中に 一人鼻歌して
あなたのことを想い出すFree

どんどん広がっていった感情が、ちゃんと最後に1番サビの「真夜中の歌」に帰着する、日常のポップスに引き戻す構成。

ここで歌われる「自由であり不自由なfreeをどう落ち着けるか」というテーマが、今作の各楽曲の世界観の起点になっていきます。

 

Free

Free

  • provided courtesy of iTunes

 3. 白いカイト(Album Version)

超名曲。akkoのボーカルの中性性、少年の様な純粋さが凝縮された一曲。個人的にMy Little Loverで一番好きです。

跳ねるエレキギターとスネア。Bo Didley beatを引用する辺り、古き良きポップスに対する意気込みを感じます。キーボードが入ってくる一瞬で景色が夏に変わる、この鮮やかさはまさしくイントロ大王ここにあり、という感じ。

悲しみの言葉は 全部すてたい
愛はひとつの言葉では 語れないけど
悲しくなる程 誰かを愛したい
それに気づかぬフリをして 時は流れた

Freeからの流れで聞くと、この歌い出しが、失意の中で普遍性を求める女性が幼少期の純粋な感情を思い起こす展開にも取れます。

空は夏の色に染まる 白いカイトも揺れている
心の中つないだ恋のタイトロープ渡りたい

その純粋さの象徴が、空に舞い上がるカイト。「夏の色」としか言っていませんが、私には晴れ渡る青空に聞こえます。

一方、2番では「暗闇の中で焦る感情」に主人公の心境を振った上で、

雲の切れ間からこぼれる 輝く予感を集めて
ここで今 鼓動打ち 呼吸してる oh my soul

と空に雲がかかり、それが晴れる予感を感じさせ、

夕暮れの空に向かって 少年はカイトを上げてる
まるで地球と話をしてるみたいさ なめらかに

夕暮れという時間経過を示しながら、「広い海(地球)と舞い上がるカイトの対比」にスケールを広げる。

銀色の波に向かって 白いカイトは揺れている
まるで宇宙とダンスをしてるみたいさ 永遠に

銀色とは月明かりのことでしょう。夜になってさらに上がるカイトは、星空と対比されることで必然的に「宇宙とダンス」に繋がると。1番で「世界」に置いて行かれていた自分は、宇宙とリンクして自由を手に入れる。

夏空→雲→雲間の光→夕暮れ→夜(世界→地球→宇宙)の流れで自然のエネルギーを感じていく。曲の高揚感が増すのに合わせて、聞き手の視点上昇と時間経過をリンクさせる。この巧みな構成があるからこそ、最後のカタルシスが生まれるんだと思います。*2

 

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4. めぐり逢う世界

作詞は小林武史AKKO

イントロSE終わりの力強いピアノに小林氏の充実感を感じる。サビに入ると藤井謙二のギターが自由自在に動き回っています。ここまで明るいポップスが続いただけに、低音なAメロからサビで一気に伸び上がる展開が耳に残ります。強烈なシングル2曲に挟まれたアルバム曲ながらも全く見劣りしない存在感で、当時の小林氏の勢いを存分に示しています。歌詞はかなりストレートなラブソングです。

平凡な毎日の 隙間を抜け
あなたのすべて Lu Lu Lu… 守るの  

5. Hello,Again~昔からある場所~

作曲は藤井謙二小林武史

心に染み渡るイントロは藤井謙二の大仕事。これだけでJ-POPの歴史に名を刻んだと言っても過言ではないでしょう。小林武史が関わった全ての作品の中でも、最高傑作ではないでしょうか。サビの転調がたまらない。シンプルさを突き詰めた楽曲。

小林氏が2015年の「re:evergreen」発売時のインタビューでこの曲について、「ミディアムテンポの8ビートが外国人にはバラードに、日本人にはフォークロックに聞こえる」と話していたのが面白かったです。確かに日本歌謡のど真ん中という感じ。長年山下達郎を支えた青山純氏のドラムも素晴らしい。

いつも 君と 待ち続けた 季節は
何も言わず 通り過ぎた
雨はこの街に 降り注ぐ
少しの リグレットと罪を 包み込んで

泣かないことを 誓ったまま 時は過ぎ
痛む心に 気が付かずに 僕は一人になった

"記憶の中で ずっと二人は 生きて行ける"
君の声が 今も胸に響くよ それは愛が彷徨う影
君は少し泣いた? あの時見えなかった

過去の純粋さを失う痛みと向き合いながら、前を向こうとする。もがくうちに冷たい雨の降る季節は過ぎていった、という歌詞。innocent worldっぽいなといつも思います。

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6. My painting

ここからB面という雰囲気。フレンチポップ風。シンセがありギターがありストリングスがあり。Hello, Againの次に来る選曲ってすごく難しいと思いますが、あえて振れ幅を付けてきた感じ。

恋のため 愛のために
夢とわかっても信じたい
恋のため 愛のために
自分の気持ちを信じていたいから

Wait 誰より好きでも今のままがいい あせらずに
Stop 答えはないけど私 Single girl

いつか Happy girl

freeの等身大な女性像が帰ってきましたが、白いカイトからhello againまでの3曲で「純粋さを直視した経験」を積んだだけに、freeの時の迷いに対して、今の自分への肯定感が増している。

7. 暮れゆく町で

作詞はAKKO

ようやく落ち着ける、女性目線の別れのバラード。他の曲に比べてボーカルがちょっと固めで、主人公=akkoの成長を示している?音数も少なく、箸休め的なポジション。

8. Delicacy(Album Version)

Hello, Againのカップリング。ファンキーなギターとブラス。ベースも動いて、楽器も色々鳴っていてサビのメロディも複雑だけれど、ごちゃごちゃしていない。不思議なバランスです。

何だかんだ言っても 誰かを求める事で
喜んだり喜ばれたりしている
たぶん平行線みたいに見えるけど 干渉ばっかしてる
もどかしくも 少し興奮したりね するわ

日常生活の中の共感や干渉を大切にする小林氏らしい歌詞。

1+1=2だって数字を考えた人も きっと恋愛じゃ
そんなにうまくはいかないかもね
教えられた事と 知りたい事はいつでも
アア 少しずれてる それはデリカシーがいる事

「教え」を求めていたfreeへの回答。理屈を越えた恋愛の駆け引きというテーマがそのまま次の曲へと繋がります。

9. Man & Woman

デビューシングル。爽やかなアコギと巧みなホーンアレンジ。

サビの言葉の詰め込みっぷりの無敵感。不安定なakkoのボーカルが、ゆらぐメロディにスリリングに乗っていく快感。恋に落ちる瞬間の不安とときめき。どこかaikoの「花火」にも通じる物を感じます。

悲しみのため息 ひとり身のせつなさ
抱きしめたい 抱きしめたいから Man & Woman
愛してる 愛してるって言っても
好きだから 好きだからって言っても
きっと言葉だけじゃだめだよ Man & Woman

 

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言葉を越えた感情の高まり。恋愛や別れといった日常の心の機微を磨き上げたポップスとして歌うのがMy Little Loverであり、簡単な言葉の集積であっても、音とメロディの力で普遍性に迫ることはできるんだなと改めて感じます。

10. evergreen

表題曲にして、明らかに異質で壮大なスケールを感じさせる作品。小林氏の自然をモチーフとする歌詞の源流でしょうし、音楽の力でエバーグリーンにたどり着きたい、という小林氏からのシンプルな決意表明とも言えます。

枯れ葉落ちてく 木枯らしが吹いてく 長い冬を越えて
自分の中 春が訪れて 夏は来る

永遠の緑は 心に広がってる
そう信じていたい いつの日にも どんな時でも
evergreen with you

 【総評】

ストリングスとピアノで派手に仕上げる傾向の強くなった小林氏の2000年代後半のプロデュースは見る影もなく、曲ごとに適切に足し引きをしており、特にブラスと細かなギターカッティング(これは藤井氏の貢献が大きいでしょう)をアレンジの中心に据えています。

改めて聞き直してみて、小林氏は当然として、藤井氏の豊かな音色がマイラバらしさのかなりの部分を支えているんだなと思いました。

そもそも意外なことに、生のストリングスが入っているのがMagic TimeとMy paintingしかない一方、全曲に打ち込みが入っています。小林氏は「制作をかなりのペースで進めていた」旨を語っていますが、どちらかというとパソコン内で練り込んだ曲作りであり、こうしたスタンスは作品単体でストーリーを完結させ、ライブを重視しないユニット自体のコンセプトとも一致します。*3

Man & Womanで触れたように、難しい概念を持ち出さず、分かりやすい言葉と日常を起点にしつつ、哲学的なテーマにまで深みを持たせる。My Little Loverの目指すポップミュージックの魅力が最大限込められた作品です。

*1:ちなみにこの頃、小林氏が面倒を見ていたミスチルはAtomic Heartツアーを終え、初のスタジアムとなる空ツアーをこなしつつ、シングルはesにシーソーゲームにと、どんどん上昇気流に乗っている時期でした。evergreen発売直後の12月下旬から、NYでの深海レコーディングが始まります。

*2:なお、2009年のap bank fesに出演した際に映像化されたこの曲のパフォーマンスも素晴らしかったです。テンポを落とし、音数も減らしたバラード調のアレンジで、原曲のある種のギラギラ感が薄れている一方、確実に成長したakkoの歌唱、包み込むような小林氏の演奏、適切に曲を盛り上げるストリングスと小倉博和のギター。そして何より、珍しく感極まった様子の小林氏と、ビシッと歌いきって満足そうな笑みを浮かべるakkoという元夫婦の表情の対比が、彼らのウエディングアルバムでもあったこのアルバムを優しく振り返っているように見えて、大変グッと来ます。

*3:生音をふんだんに盛り込んだre:evergreenはこうした性質との対比になっているとも言えます。

【Mr.Children】ヒカリノアトリエで虹の絵を描く

  

エレカシライブもThanksgiving25の発売も迫りつつある中、ようやく数周した雑記的な感想です。

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【総評】

いかに4人がコンセプチュアルなツアーを築いていったか、特に田原さんの活躍は見えました。ヒカリノアトリエの「苦難を乗り越えていく人生観」は、確実にかつてのような声が出なくなっている桜井さんの苦しさや、可能な限り音楽を続けたいという思い、それを支えるメンバーの姿勢が曲になったものだと思いますし、歌えずに苦しむ桜井さんの姿をあえて収録したり、古い楽曲に対して声の変化がプラスに作用する瞬間があったりと、Mr.Chidlrenのボーカル・桜井和寿のドキュメントしては面白いと思いました。 

 

とはいえ、バンドの映像作品としては、メンバーそれぞれの活躍や、ブラスを交えた大人数のバンドとして仕上がっていく様を描き切れているとは思えず、物足りなさは残ります。選曲に関しては、もともとミスチルはレア曲をなかなか映像化しないアーティストではあるけれども、メッセージ的にもせめて「通り雨」は欲しかったなあ…。 

 


Mr.Children「Mr.Children、ヒカリノアトリエで虹の絵を描く」Live&Documentary DVD / Blu-ray Trailer

 

 【各曲ざっくり感想】

1. ヒカリノアトリエ(インスト版)

歌が無い分、メロディラインの美しさが際立っていて、いきなり泣けてくる。忙しい僕らでも感じましたが、ミスチルに眠っていた生々しい演奏感やメロディの魅力をダイナミックに引き出す世武裕子さんの手腕。見事です。

2. お伽話
ちゃんと言葉を伝えたい、という演出が嵌っていました。私も当時会場で、何が始まったんだろうと不思議な気持ちになったのを思い出しました。

逃げても逃げても
どこまでも追いかけてくるんだろう
自分自身っていう亡霊

清らかでいようなんて今さら思ってない
だけど そうあれたらなってどこかで願ってる
お伽話に出てくるような
間抜けな奴はどっかにいないかな

虚飾に満ちた自分を卑下しながらも、音楽が描ける「希望」に思いを寄せてみたり。「覚醒剤」「札束」など、最近にしては珍しく強い単語を並べていますが、テーマ的にはinnocent worldの頃から変わらない、正直ミスチルにとってはお馴染みの内容だと思います。

 

映像で見ると、当初のセトリには「友達のままで」が入っていたのが映り込んでいます。お伽話のポジションには「血の管」。とにかくホールの1曲目では客のテンションを下げたかった、という桜井さんの狙いは当初から一貫していた様です。

 

3. You make me happy

小春が合流し、音の幅や色味が付いてきたバンド感を感じさせる選曲。力の抜けた大人な余裕や自信を感じます。枯れた桜井さんの声が魅力的。CD音源より伸びやかで良い感じです。50歳を過ぎた彼らだからこそ鳴らせる新しいMr.Childrenだと思います。

デジタルとアナログ その狭間の時代に 

響き渡った青春のサウンド

君といるこの時間が好き

君のいるこの街が好き

久々のホールツアー感。

4. PIANO MAN
多彩な音に包まれる4人。音のバランスが良いですが、ある意味小林武史オンステージに振り切れてたホームアリーナ版も嫌いじゃなく、甲乙付けがたい。無限大にあーる!のシャウトがないのはちょっと物足りなく感じてしまいました。

ポテンシャルならまだ十分に発揮していない

無限大にある きっと可能性は果てしない

立ちすくんでいようが 歩いていようが時計の針は進むぞ

5. クラスメイト
個人的には、この曲を収録してくれただけで数千円の価値があります。生々しいアコーディオンが素晴らしい。

往年の艶っぽさはないけれど、今の桜井さんの歌う、こういうクラスメイトもありだと思います。ボーカリストとしての当事者性やリアリティというより、乾いた温かみのある虚構感。人によってはQツアーに比べて軽く聞こえるのかもしれないけれど、私はこれはこれで素敵だと感じました。

 

山梨公演でのくるみ。かなり苦しそうで、声が出ていません。ここをわざわざ残すのはミスチルの作品としては珍しく、「おや?」という感じ。

 6. 妄想満月
クラスメイトと同じく、ボーカルの軽さと虚構性がいい方向に作用しています。
JENは鳴き声はリアル。

7. 虹の彼方へ
老いを受け入れながら挑戦していく。今の桜井さんがこの曲を歌っているってだけで、on dec 的に無条件で泣けてしまう。走馬灯的な、明るい切なさが滲む名演だと思います。 

Walkin' on the rainbow

雨上がりの路上に輝く

飛び出した My dream

8. しるし
映像ではラストサビだけ。湿っぽすぎない。ライブ音源に関しては、STD版が良すぎたというのが私見です。 

9. こころ
配信した上で、何かのドラマ主題歌にして欲しかったなあと。挑戦的なシングルも良いですが、こういう温かい歌をもっと世間に投げ込んでいけばいいのにとつくづく思います。
曲調的に、音源化時はこれも世武さんアレンジになるのではないでしょうか。豪勢ではないのに、ずっしりとした力強さが伝わってくるバランスの演奏でした。最後の転調ありきのキー設定な感じがします。
心についての説明のMCもとても良かったです。

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ちょっと折れてる…泣

数えきれないほど踏みつけてきた 人の心
何年もたった今 その場面を思い返し
恥ずかしくて消えたくなる

時流に乗り走った自分を許せたのも
それ以上に大きな
出会いが確かに僕を変えてきたから

胸が痛むのは
あなたが
心を僕に教えてくれたから

たかが静かな気持ちで
嬉しくなるのは あなたが
幸せに触れるヒントをくれてるから

取るに足らぬ出来事で
嬉しくなれるのはあなたが
心を僕に与えてくれてるから

1番、2番、ラストのサビ。「あなたが」の配置に掛ける小技。わざわざライブ会場でこの曲の歌詞カードを配るだけのことはあります。

嬉しくなる=あなたがいることを条件に、その時は嬉しくなる

嬉しくなれる=あなたがいるだけで、自分は嬉しい気持ちになれる

と「あなた」への感情が進んでいるように取れます。

 

10. ヒカリノアトリエ
キー下げ。小春のコーラスが良い。照明演出、暗闇の中のキラキラが歌詞のメッセージとばっちり合っていて、さすがにミスチル側の気合いを感じさせます。

過去は消えず 未来は読めず 不安はつきまとう

だけど明日を変えていくんなら今 今だけがここにある 

使い古しの嘘さえ許せたなら 虹はもうそこにある

旧歌詞での弾き語りも収録。偽物と知りながらも希望にすがる前向きな姿勢。

 

「桜井が歌えなくなってしまったらMr.Childrenは終わり」。


11. メインストリートに行こう
収録は後半のみ。短く切った歌唱や、ステージ上がる直前の表情から不安や緊張感も伝わってきましたが、しっかりと歌い切って最後にはJENの笑顔。公演中止シーンの後だけにグッと来ます。

12. 跳べ
声の不調、前曲の「完璧じゃなくても完璧以上を目指す」というMCの流れでこの曲は熱い。ヒカリノアトリエというバンドが出せるフルパワー。

とはいえ作品的な盛り上がりのピークにこの曲とは、やっぱりファン向けのドキュメンタリーなんだと感じます。 

そうだここが出発点 そうだここが滑走路

目指すべき場所はなくとも

13. 終わりなき旅
4人のエネルギーを出し切る曲。ロックバンドミスチルを全面に、スカッとさせてくれます。ヒカリノアトリエの骨格にあったミスチルらしさを剥き出しに示しつつ、Thanksgivingへの引きを作って終了。ラストのサビの歌い回しのアレンジはあんまり好きじゃないです。

 
Live & Documentary 「Mr.Children、ヒカリノアトリエで虹の絵を描く」digest

 

ヒカリノアトリエMV】

個人的にミスチルのMVは、エソラを最後に心引かれる作品があまりなかったのですが、今作は泣けました。最後まで見てこそ良さが伝わるのに、フルバージョンをYouTubeに上げない公式…。ThanksgivingのPV集に収録が決まって少し安心しました。


Mr.Children「ヒカリノアトリエ 」MUSIC VIDEO (Short ver.)

【Mr.Children】新曲「here comes my love」感想

 

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Mr.Childrenの新曲「here comes my love」が1月20日より配信開始。

 

前回投稿からだいぶ間が開いてしまいました。

公式の歌詞も無い状態ですが、思ったことを書いていきます。

 

①音:新たな定番サウンドの確立

ざっくり言って、ノブナガ→Be Strong→足音→Starting Overの系譜にあると思いました。乾いたバンドサウンドと軽やかなストリングス。JENの良い仕事が続いています。

 

「himawari」はラウド寄りに振れた特殊な試みでしたが、この曲で持ってセルフプロデュース化以降のMr.Childrenが目指す音の方向性がだいぶ見えてきた感じがします。

 

ロックバラードというジャンルで言えば、「Everything(It's you)」、あるいは音的には「Starting Over」に近いですが、Bメロでスッと抜いてきたり、イントロのピアノ、熱いギターソロと、一曲の中で色んな表情を見せてくれるのが今作の特徴でしょう。

 

Everything(It's you)では、制作時に最後のサビを転調させるか迷った上で、あえて転調を避け、演奏の力強さで聞かせる道を取りました。ギターソロで感情を溜めて、最後のサビで爆発させる。今作もパターンとしては近いですが、最後のサビに至るまでの諸々の小技や演奏の押し引きの妙が、この間のバンドとしての成長と言えるでしょう。音を足すだけではない感情の揺さぶり方というか。

 

例えばサビに関して。AメロBメロのゆったりとした譜割りからすると、一気に言葉を詰め込んでたたみかかけてきます。静かなストリングスとギターが曲を盛り上げる一方で、Bメロまでかっこよく聞かせてきたJENがスッと下がる。全体として過剰ならないバランス。

2番以降フルートやホーンを脇に混ぜ込み、来るべき希望を予感させていきます。この辺はヒカリノアトリエの良い影響を感じさせます。

希望を胸に吸い込んだら 

2番サビでhere comes my loveの代わりに韻を踏みつつ歌う「希望を」「吸い込んだら」。ファルセットの開放感と歌詞がリンクしており、非常に感動的です。

 

もの悲しく始まりながら、階段を一段一段上るように次第に希望の光をつかみ取っていく。セルフプロデュースでもここまでドラマチックに、ダイナミックにアレンジできるのか、と嬉しくなりました。

また、「himawari」にカップリングで収録した「終わりなき旅」の音作りも、今作に繋がってるなと。正直、あの演奏聞いた時はなぜこれをわざわざ…という感じでしたが、遡って納得感が出てきたなと思いました。

音源ではギターソロを弾いてるのは桜井さんでしょうか。ライブでどうなるんでしょう。

 

やはりこの曲を連想。

 

 ②歌詞:終助詞の「な」と「ね」

いつかたどり着けるよね

この最後の一言にドキッとさせられた人も多いはず。この部分のテクニックを紐解いてみます。

 

innocent worldは「会えるといい」ではなく「会えるといい」だから感動的なのだ、という考察が昔からあります*1

「な」という終助詞は、問いかけの言葉でありながら自己完結的なニュアンスがあり、相手に同意を求める「ね」とは異なります。

innocent worldは(自分の)胸に流れているメロディー(純粋性)に対する郷愁と陶酔を叫びに変えた作品であり、本来他者に対して閉じた悩みを主題にしています。だから、「いいな」で終わる。

そして、この曲が面白いのは、こうした性質にも関わらず、メロディのポップさで押し切って「閉じた感覚をみんなで共有できてしまう」点。本来内的なはずの「いいなぁ」という呟きを、デカイ声で叫ぶ気持ちの良い違和感。この捻れた感覚こそが、innocent world最大の魅力と言えます(めっちゃ私見です)。

here comes my loveに戻りまして、

やぶり捨てようか
いや 初めからなかったものって思おうかな 

今も僕は君を正しく導いてるか

1番の頭と2番の頭に出てくる「君」に対する問いかけです。「な」です。自己完結であり、自身が勝手に言ってるだけの決意表明です。

他の箇所で「君」に関わる部分を抜き出してみると、

この海原を僕は泳いでいこう 

その海原を誰もが泳いでいるよ

また愛する人の待つ場所へ

数え切れない偶然が重なって 今の君と僕がいる

君のそばにいるよ

また君と泳いでいこう

と次第に自己言及的な、「な」な姿勢から「君」と向き合う方向へ近づいていきます。それでも、「君」に直接問いかける言い方を巧妙に避けています。最後のサビで「君と泳いでいこう」となり、ようやくここまで来たかと。

そして、最後に(恐らく桜井さんは自信たっぷりに)「たどり着けるよ」と持ってくる。遂に「僕」が「君」と向き合う。一方通行で閉じていたストーリーが外に開けるとともに、「僕」の目線が安全圏にいたはずの聞き手へと突然向けられる。だから印象的に響く。

主題歌となったドラマは、妊活に悩む妻とあまり理解のない夫の話のようです。夫が不妊を自分の問題として捉え、2人で向き合うようになるストーリー(だとすると)、この歌詞構成がドラマの展開を補完しているのかもしれないと思います。

 

足音の続き

ドラマのテーマ的に精子卵子を意識させているのは当然として、桜井さんがその舞台に選んだのは「海原」。壮大な曲調のサビに持ってきて、「鯨」や「ピノキオ」「灯台」に絡めている。

「かつて見た夢の地図を破る。それでも進もうとする」と言われると、BUMP OF CHICKENの「ロストマン」も思い出します。自分では歌わないと公言しながら、去年のap bank fesでついにカバーしたこととも、アイデアとしてはどこかで繋がっているのかもしれません。

REFLECTION後の最初のシングルとなった「ヒカリノアトリエ」は人生の行進曲でした。雨が降っても、歩き続ければ虹は見えるかも知れない。だから、歩みを止めない。

輝く光じゃなくても

消えることのない心の明かりはいつも

君を照らしている

ヒカリノアトリエ同様に、今回の歌詞からもまた、枯れていくかもしれない自分の才能を見つめつつ、情熱を失いたくないという桜井さんの思いが感じられます。

足音、REFLECTIONで新しい靴を手にしたMr.Children。次のアルバムは、「その歩みを止めない」との決意に溢れた作品になりそうだと感じました。

*1:詳しくは別冊宝島の「音楽誌が書かないJポップ批評17 “イノセントワールド大全”」に記載があります。

【藤巻亮太】北極星 キレが戻ってきた

 

2017年9月20日発売の3rdアルバム。

本人も自信作と言うように、初期~中期レミオのような伸びやかでキレの良い曲が復活しつつあります。

「完全復活」とまでは言わないですが、久しぶりの快作だと思います。先日ライブに行って熱が再燃したこともあり、現在改めてヘビロテ中。

            f:id:olsen-revue:20171213004611j:plain

アイランド以降、「もう踏ん切れた」と発言しては「やっぱり迷いが…」と撤回し、ふらふらし続けてきた彼ですが、ここまで自信を持って音を鳴らせているのは本当に久しぶりなんじゃないでしょうか。

 

かつてレミオが好きだった人、ソロになって迷走気味の時期に離れてしまった人にも、今の藤巻氏が良いコンディションで制作できていることを知って欲しいなと思います。

 

本人もインタビューで自己分析しているように、1stアルバム「オオカミ青年」は、レミオロメンの反動として藤巻氏のダークな側面を全面に打ち出した「ソロらしい」作品でした。

そこで言いたいことは言い尽くしてしまって、空っぽになって3年半制作が止まる。で、長いトンネルを抜け、「レミオとの差別化を図る必要なんて無い。縛られる必要はない」と開き直った末に完成したのが2nd「日々是好日」。

 

今作はこれらの経験を起点に、1st・2ndの陰陽をバランス良く取り込んで、ソロになってから彼が続けてきた「旅」の風景も曲に結実させている。

 

悩んで立ち止まって制作もストップしてしまうのが藤巻氏が嵌る悪いパターンですが、今回は実に自然体で、のびのびとしています。ネットでインタビューを呼んでいたら、小林武史氏からも至言をもらっていたようです。

藤巻亮太「北極星」インタビュー|変わるべきは他人じゃなくて自分 自然体で生まれた「北極星」 (3/3) - 音楽ナタリー 特集・インタビュー

今回このアルバムに向かう直前ぐらいの時期に「お前はあまり理屈っぽくならないほうがいいよ。お前はさ、関東近郊の山のあるところで育って、でもRadioheadが好きでさ。ああいうよくわかんない感じがいいんだよ。あまり“洗練”に向かうなよ」と言われました。

フォーキーで田舎くさい雰囲気を漂わせながらも、イエモン的なポップロックをベースにレディへとかビョークまでもを混ぜ込んだのがレミオロメンであり、藤巻亮太の世界観です。

 

ソロアルバムも3作目ともなれば色んな作業もスムーズになってくるし、自信も付いてきたんでしょう。彼らしさが存分に感じられる仕上がりになっています。正直、私もこの間何度も心が離れかけましたが、よくぞここまで戻してくれたと嬉しく思います。

 

ベースに前田啓介、ドラムに神宮司治、編曲に小林武史を起用する曲もあり、本来の藤巻氏が力を発揮できるメンツをうまく当て込みながら素直に曲と向き合っている印象です。(作品に自信があるからこそできるオファーでしょう)

 

その意味で、2ndの延長線上にあるとも言える。ただ、2ndは底抜けに明るく聞こえるものの、ちょっと深みに欠くというか、個人的には物足りず、正直私はすぐ聞かなくなってしまいました。

 

2ndは1st制作後の暗いトンネルを抜けた先にある光を描いているけれども、視界に映るのは明るさばかりで、全体に景色が白んでいる。そうした印象が拭えないのが原因だと思います。前向きではあるけれど、細かな具象を描ききれておらず、薄味ゆえに飽きも早かったんだろうと。

 

今作はそこから一歩進んで、トンネルの先の風景を過不足なく描けていると感じます。東京のビル群、山梨の盆地と山と果樹園、雷が宇宙へと伸びていくチベットの山々。これらの空気を薄っぺらい言葉に頼らず、地に足付いた音楽へと変換できている(詩にはまだまだ不満はありますが)。レミオロメンを褒める時によく使う「土の匂い」がする作風がちょっとだけ戻ってきたかなと。

 

もう一つ、嬉しいこと。アフリカやチベットに旅行ばっかり行っていた藤巻氏が、ようやくその経験をストレートに曲としてアウトプットしてくれたことです。

彼の目で見たチベットの風景がどんな曲になるのか、ずっと楽しみにしていたのに遅々として制作が進まず、「行くのは良いけどさっさと曲書いてくれよ」とモヤモヤだけが増す状況になっていましたが、やっとやっと形になった。クオリティ的にも、待ってました!という感じです。

 

基本的にドラムとホーン以外はほとんどの演奏を藤巻氏自身が担当し、編曲も手掛けています。

【各曲レビュー】

1. 優しい星

宮司氏がドラム。東京のスタジオでレコ―ディング中、ビルの屋上で空を眺めたことから生まれた、とのこと。

低い藤巻氏のコーラスから、穏やかなアコギのアルペジオが流れ始める。

ねえ 君が思うような男じゃないけど
大切な人を守れるくらいになりたい
心の砂漠に水を与えたら
優しさの種を蒔こうか

レミオロメンの1stアルバムから、朝顔のサビを連想させる歌い出し。

砂漠を歩きましょう 月は砂をなじる 一人で歩けるさ 朝顔の種を蒔き

朝顔は簡単に言えば「心に潤いを保って、孤独な砂漠でも夢の花を咲かせ続けたい」という歌です。その思いへの原点回帰との見方もできると思います。

珍しく「男」と性別を特定していますが、男女間のラブソングというより藤巻氏本人を歌っていると捉えるのが自然かと思います。

セメントの街に花を咲かせたら
ビルの屋上で 空を抱きしめ
涙が出るほど 悲しい日だって
一人じゃないよな 優しい星よ

「一人でいる悲しみ」を明言したのは新しい。日々是好日と違い、現状認識がしっかりしている。

冬の訪れを誰も避けられず
春の温もりが心にしみる
人はそれぞれに帰る場所探し
一人きりの部屋優しさの影

時関経過と、冬の訪れの受容。でもそこにあっさり絶望しないのが、今回はひと味違うなと感じさせる一節。

あの頃はバカすぎて
人の痛みも分からなかったよ

4月晴れの中一人見た桜
華やぐ世界が眩しすぎたけど

冬を越えて一人になってしまった藤巻氏。彼にとっての華やぐ世界が何を指しているのか読みにくいですが、桜は「手にできない移ろいゆく美しさ」なんでしょう。

2. Blue Jet

チベットで生まれた曲。ギターもブラスも全力で鳴りまくる、今作最大のハイライトです。ベースは前田氏。

タイトルは非常に高い空でのみ発生する、雷が宇宙に向かって落ちていく現象を意味するそう。近年ようやく写真の撮影に成功したばかりで、メカニズムはよく分かっていないらしい。曲からは人知を越えた壮大さ・ワクワク感や不思議な民族音楽のテイストが感じられます。

gigantic-jet-china *1

 

歌っているのは音楽という人と人を繫ぐ「橋」に関することです。

藤巻氏は粉雪での大ブレイク以降、大衆の共感を大切にすることと、自分の表現を貫くことの矛盾について、不器用なまでに悩み倒してきたアーティストです。

共感を吹っ切って作ったのがオオカミ青年であり、その反動が日々是好日。

この曲はようやくその足踏みから一つ進んだ結論が提示されています。

欲望が行きついて 何になった
悲しみが過ぎ去って 誰になった

声を届かせて 青い空の下
やがて悪夢から 覚めて雨あがる
風が吹き去って 人が立ち去って
何も残らない 自由を満たして

喪失感の中、悲しみの中でも歌うことを「自由」と受け止める。

つくりかけの橋みたいな気持ちで
濁流を受けている心と身体
果たすはずの約束 待たせてる人
みんなみんなそれぞれ 違う橋を渡ってしまって
とり残されたとして

人は通らない それで構わない
ただここに生きて 橋を架けてゆく
雲が立ち込めて 犬も吠えなくて
誰の気も引かぬ 自由を満たして

この2番最高です。半端なまま人を待たせている橋とは藤巻氏自身。人を繫ぐでもない、誰の気を引く物でもない自由を肯定してしまう。

空はこんなに広く 誰のもんでもなく
寂しさなんてなく 優しさしかなく
だからせめて

声が届くなら 雪解けのような
見向きもされない 温もりになりたい
使い捨てられた 代わりの効かない
本当の愛を 呼び醒ませ Blue Jet

雪解けのような自然な暖かさ・優しさを与えたい。でもそのためにはまず、自分自身が代わりの効かない存在として、もっともっと自由でいなくてはいけない。

立ち上がれよ Blue Jet
蘇れよ Blue Jet
天と地を結んで
悪夢を終わらせて

風が止まぬ間に 誰も知らぬ間に
愛を身にまとい 突き抜けろよ Blue Jet

雷=電子=音楽の橋。橋は人と人、過去と現在を繫ぎ、悪夢を終わらせてくれるはず。

共感に縛られすぎず、自分らしい音楽を続ける。それでも人は付いてきてくれるんだと確信できています。 

 

湧き出るものを信じる、藤巻亮太 クリエイティブ願望溢れた新譜/インタビュー | MusicVoice

音楽を作ることは、そういう未来よりも、今その橋を架けようとする切実な想いや、なぜ架けたいと思っているのか、そういう自分の想いと向き合っていくことなんです。結果として、誰も渡ってくれなければ僕は失業ですけど(笑)。そういう怖さもありながら、自分を信じて進んで行く。結局それしか出来ないのかなと思いながら書きました。そういう覚悟みたいなものを、この曲を作りながら決めました。

これまたネット上のインタビュー記事の引用ですが、よく言った藤巻!と叫びたくなります。

3. Have a nice day

壮大な2曲から急転直下してお気楽ポップソングに。「世界の果てで泳ぐオスとメスのクジラ」というフレーズを言うがために発展していったそうです。

跳ねるように刻まれるギターと軽快なブラスのイントロが印象的。ベースは前田氏。

良い意味で適当な歌詞と耳に残るサビと動き回るベース。どこかレミオっぽさもあって、懐かしさ漂う一曲です。

春色のキスをしようよ いつもの朝とはぐれて

愛の口づけしなきゃ 海の底で僕ら溺れてしまう

キス、口づけがテーマになっています。やはり藤巻氏にとって「理想の世界」=「春」の図式が成り立っているようです。

思い出と未来のあやふやなキスをしようよ

今初めて出逢ったような

そのキスは時間をも超えると。アコギとベースだけになって、メロディアスなベースが一気に表に出てくるのがとても楽しい。

4. another story

編曲・ピアノ小林武史、バイオリン沖祥子というある意味落ち着く布陣。

静かなすれ違い、あり得たかも知れない2人の未来を想像しながらも、悲しみに沈んでいくバラードです。「恋の予感から」「夢の蕾」系だと本人談。ピアノの音の深みはさすがだなあという印象。

冬の夜の不安定感を描かせたら藤巻氏の右に出る者はいないと思うんですが、その系統にはあります。特にAメロが良いです。ちょっとだけ「オリオン」っぽい。サビはやや平たんな気がしますが…。2013年ごろからずっとライブで歌ってましたから、本人的にはお気に入りなんでしょう。

もう会えないね 電話越し

月が海へ落っこちて 夜は一層暗くなって

眩しすぎる朝に耐えられぬまま

僕は溶けてしまった

受話器越しの会えない2人の不安と言えばレミオロメン1stシングル「電話」を連想します。「電話」の先にあった別れ、なのかもしれません。

5. マスターキー

前曲でちょっとブルーな気持ちになるんですが、そこから奮い立たせるような藤巻氏の叫びとアルペジオ

この曲は世界中の景色を見つめてきた藤巻氏の旅の曲であり、藤巻氏が旅で掴んだ新境地、すなわち「周囲の状況(鍵穴)が変われば、自分らしさに固執するのではなく、自分がマスターキーとなって道を切り開けばよい」との思いが描かれています。Blue Jetに次ぐ重要な曲でしょう。ライブでもとても良かったです。

Aメロで言葉をフォーキーに詰め込んでいます。あふれ出る感情と対比されるような、足腰の強いバンドサウンドと、細かく切って歌うサビ。通底するのは藤巻氏の淡々とした決意です。これもベースは前田氏。

鍵穴に合わすよに 何度も自分を変えていける

ドアの向こう何がある

マスターキーそれは心の中

鍵を開けて世界へ出よう

胸の永遠を陽に晒し

青の塊を赤く染め

黒を研げ白を野に放て

表も裏も自分の顔

ここで言いたいことは言い切ってるなと思います。胸の永遠ー自分らしさを晒す。そのためには青を赤くすることもある。オオカミもヒツジも、暗さも明るさも捨てず、そのままで解き放ってしまえばいい。

冬の中で落としてしまった 心の鍵

やっと見つけたら 鍵穴の方が 変わっていたのさ

何を見ている? ふるいパラダイム 

こちらは、粉雪のヒットから自分を見失う中で生まれた「パラダイム」という曲の歌い出しです。この曲では鍵を無くして鍵穴が変わった後、心をノックする音に従うようにドアを開け放ったら一気に雪が吹き込んで景色を一変させた、それでも元の自分は変わらないはずだ、という形で心境をまとめています。

olsen-revue.hatenablog.com

マスターキーと比べると、外的な変化に受動的に対応しようとしていたパラダイムの頃から、自ら道を切り開こうとする藤巻氏の精神的な成長が伺えます。藤巻氏は「本来20代のうちに経験すべきだった苦労を、レミオの早い成功によって味わわずに済んでしまった分、30代で苦しんだ」と語っていますが、その苦しさを越えた思いが顕著に現れていると思います。

 

6. 波音

マスターキーでリセットされた感情からスッと聞こえてくるのは、「love love love」なんてコーラスすら入ってくる、とても前向きで優しいラブソング。

単純にメロディとアレンジが素晴らしい。3月9日などに代表されるように、ギター主体のバンドサウンドでありながらきちんと大衆性を保てる藤巻氏の才能が炸裂しています。この曲はether辺りに入っていても全く遜色ないと思います。

待ち人の名も過ぎ去りし日も忘れかけた頃

出会いは眩しい 太陽の贈り物

再出発です。

会いたい君と夏の海と空

編み込んだメロディーみたいにキスをしよう

永遠だけが寄せては返して

波音みたいに一つになろう

この歌詞のセンスはまさしく藤巻節だなあと。

当然、レミオロメンの「波」への意識はあるのでしょう。

過ぎ去りし日を 見つめ なくしたものばかり見ようとして

日が暮れていく 影が伸びていく

寄せては返し 返してはまた寄せて

二人はまるで愛のように返した

他にも「夏 コーヒー」とか「雨上がり」「愛の木を育てましょう 水をあげて」等、初期っぽいフレーズが使われています。

7. go my way

暖かく前向きな気持ちになったところで、先行シングル。レコードB面の始まりっぽい。ライブの1曲目の定番になりつつあります。紆余曲折を全て今の自分だと受け止めようとする曲。これもanother story同様、サビがちょっと弱いか。大サビのへんてこ感は好きです。
遠回りもしたけど 回り道もしたけど
ここまでの道のりが今の僕を作ってる
go my way go my way

藤巻亮太 「go my way」-動画[無料]|GYAO!|音楽

8. 紙飛行機

今作唯一とも言っていいアップテンポなギターロック。ソロ1stの「キャッチ&ボール」にも似ています。ドラムに神宮司氏。相変わらず音が繊細かつ楽しそう。

レミオロメン10周年記念の「雨上がり」のリアレンジにも顕著でしたが、非常にクリアなギターサウンドが展開されています。田舎感・オルタナ感皆無な様子が、レミオロメンのバンドの変化とも重なる。

昔のレミオロメンが好きな自分からすると、正直ちょっと物足りないんですが、こういう音って昨今の流行りなんでしょうか?

歌詞的には、今の自分と、過去の友人へのメッセージ。次の北極星への伏線になっています。

紙とペンで夢を描いたら メロディーの向こう 風をつかまえて

どこか遠くへ連れてって欲しかった

紙飛行機飛んで飛んで

故郷の街が小さく見える

みんな元気かい 俺は変わった

胸のざわめき その先を行くのさ

紙とペンだけで音楽を始めた頃の思い。山に囲まれた山梨時代を振り返って「あの山の向こうには何があるんだろうと思っていた」という藤巻氏。未知のものへの期待感を音楽に込めていた若々しい衝動を、紙飛行機に喩えています。

同じように戦っているあいつの顔を思い出したよ

紙とペンで夢描くよ

そしていつか会いに行くよ

それぞれの道を歩む前田氏や神宮司氏。時間は過ぎても相変わらず紙とペンで戦っている藤巻氏が、会いに行くと宣言する。

9. 北極星

曲作りに煮詰まって、試しに山梨の公民館を借りてみたら地元の空気感に影響されて生まれたという曲。完成後、前田・神宮司両氏に音源を送ったそう。今の藤巻氏の2人への思いが詰まっている。

僕らが過ごした時間は永遠だよ

終わりが来たとしてもそれは始まりの意味

真っ直ぐじゃないけど 全部正しくもないけど

僕が選んだ道をこれからも歩いてゆく

橋のない川を 船のない海を 風のない空を 光のない森を

越えてゆける 勇気をほら 僕らは心に宿して

橋のない川を越える決意はBlue Jetでも歌っていましたが、その勇気を最後の最後に「僕らは」と持ってくるのが熱い。

藤巻亮太 「北極星」-動画[無料]|GYAO!|音楽

 

果たして、今アルバムがレミオロメン復活への布石なのかは分かりません。オオカミ青年リリース後にも再結成を検討したそうですが、その時と比べても今のソロとしての充実度は段違いです。そんな今の状況で、再結成するのが藤巻氏にとって最良なのかと言えば、先日の昭和女子大での安定したライブを見ていても、ちょっと疑問なのかなというのが私の感覚です。

 

10.愛を

美メロと孤独感に満ちた歌。すごくキャッチーで、ドラマのエンディングとかにも合いそう。正直アルバム初聴時は、北極星からの流れでちょっと泣きました…。

エフェクトの掛かったギターイントロから、アコギ一本でとうとうと歌う寂しさ。次第にギターが絡み、サビで藤巻氏を支えるように響く河野圭氏のピアノがまた泣ける。

ずるい自分をさらけ出して 誰からも嫌われてしまいたい

偽物の優しさでは 夢から覚められない僕ら

自分の中の毒を認識しながら、

サヨナラはせめて愛の中

苦しいのは恋が美しいから

勝手な人生を生きるより

愛を 愛を 愛を

みんなみんな思い出になって どれもこれも届かなくなって

せめて愛に満ちたサヨナラを。「せめて」に苦しさが滲んでいて良い。

11. Life is Wonderful

もっと綺麗に終われたとも思うんですが、アルバムラストにあえてぶっ込んできています。

打ち込みの3拍子と浮遊感のあるギター。穏やかな曲調を壊すように、間奏にはcreepばりの「ガガッ」が入っています。眠り=夢と現実の狭間の奇妙な感覚と、それでも揺るがない思いを歌にしている。

正直か嘘か 昼か夜の闇か 運命を決めるのは今の僕ら自身

胸の奥の夢と希望 表側へ開く扉

そこで会いましょう 新しい君と僕と世界で

日々色んなニュースがあって曜日も変わるのが「世界」だとして、僕らも日々変わっていこうというマスターキーの主題を、日常に置き換えている。

 

Bonus Track(初回盤のみ)

12. LIFE

ツール・ド・東北のテーマソング。「応援しているつもりの人に励まされる」という大会のテーマが歌詞のコンセプトにあるそう。ミュージシャンとファンの関係もそうだよなあ、と思いつつ。

日々是好日(アルバムでなく曲の方)の時も思いましたが、この手のシンプルなポップソングは、藤巻氏くらいならサクッと書けるんだろうな、と感じます。良い曲。

感情線を そして生命線を やがては運命線をも書き換えて

なりたい自分に近づいていくんだ 僕たちは

考え方→行動→運命。「深呼吸」を思い出します。

領海線を そして国境線を

やがては僕とあなたを隔てる線をすっと消しながら

藤巻亮太 「LIFE」(ツール・ド・東北 公式テーマソング)-動画[無料]|GYAO!|音楽

13. 3月9日

「応援」をキーワードに、タブゾンビにブラバンみたいなことをやらせるという企画。

この曲に関しては詳しい説明は不要でしょうが、新アレンジで「3月9日にはこんな側面もあったのか」とちゃんと感じられました。「この曲を一番知り尽くしているのはやっぱり本人なんだな」と改めて感じました。

 

「完全復活」のためには不満点も書いておきます。

・歌詞

「ありがとう」「君が好き」言い過ぎ問題。風のクロマからずっとそうですが、決めのポイントにいわゆるJ-POP的なストレートな歌詞を配置することが多く、どうしても浮いている感じが否めない。ここはもう変えようがないのでしょうか。

・強烈な曲がない

ハロー流星群、月食、かすみ草。レミオ時代だったら確実にお蔵入りしていたであろう、聞き手も引いちゃうくらいヘビーな楽曲が入っていないです(Blue Jetにちょっとその香りがするくらい)。この手の曲は「突然降ってくる」らしいので、意図的に抜いたというよりも、今回たまたま生まれなかっただけだとは思いますが、せっかくのソロアルバムなのでやっぱり欲しかったなと。*2

・キャッチーなシングルがない

go my wayが配信限定の先行シングルですが、明らかに地味。北極星もどちらかというとファンに染みる曲ですし、分かりやすいテーマソングがあってもよかったと思います。

キャッチーさに関しては、LIFEと(当然ですが)3月9日が突き抜けていると思うので、その意味でボーナストラックも含めた13曲入りだと捉えると全体のバランスは多少良くなります。*3

*1:こちらのサイト(https://earthreview.net/gigantic-jet-lightning-over)からの拾い物です。

*2:日々是好日で明らかに浮いているかすみ草をこっち収録でも良かった気も、というのは結果論でしょうけれども。

*3:オフィシャルの番号表記が3月9日まで通しで書いているのも、案外そんな意図があるのではと勘ぐったり。

【Matthew Sweet】パワーポップとGirlfriend

 

パワーポップというジャンルがあります。ものすごくキャッチーで、好きな人は好きだけど、近づかない人にはかすりもしない。でもそこそこ歴史があって、今も続いている。そんなちょっと変わった音楽の魅力を紹介できたらと思い、筆を執りました。

 

ジャンル分け自体が曖昧模糊としたものですが、ここでは一端「ビートルズから親しみやすいメロディとギターサウンドだけを抽出したような、ビートが跳ねてる感じでコーラスがよく入る、シンプルな歌もの」と定義しておきます。*1

 

70年代初めに既存のロックへの反発からパンクが生まれ、ニューウェイブへと進化していきますが、その流れに逆らう形で70年代後半に生まれたのがパワーポップです。*2

パンクが王道への裏返しだったのに対し、そのパンクをさらに裏返した結果、表になったような。今の感覚だとしっくりこないですが、コステロもパンクの亜流・ストレートなロックンロールという意味でパワーポップと呼ばれていたらしい。

そもそもがイギリス発の潮流であり、ニック・ロウとかXTCとかラズベリーズ辺りを元祖と呼べばいいんでしょう。

 www.youtube.com

 

チープトリックもパワーポップの一員に数えられるそうです。ザ・ナック、フレイミン・グルーヴィーズ…70年代後半~80年代前半は、アメリカ発のパワーポップが輝いた時代でした。

残念ながらこれ以降、この種の音楽は「ダサい」扱いとなっていきます。確かに、一部のバンドに関しては、80年代の商業主義チックな雰囲気と60年代の悪い意味での古臭さが結びついて、何とも安いアイドル感が出ていたのは否めないとは思います。*3

 www.youtube.com

ただ一方で、例えば80年代半ばからマシュー・スウィートやザ・ポウジーズが米国内のインディペンデントな領域で地道に活動を続け、R.E.Mのマイケル・スタイプとも交流していたといったエピソードを聞くと、冬の時代だった80年代パワーポップも、オルタナグランジといった次の時代に向けた種を蒔いていた…というのは甘い評価でしょうか。

 

そして、マシュー・スウィートが91年に発表した3rdアルバム「Girlfriend」で、パワーポップは息を吹き返します。相次いでヴェルヴェットクラッシュや、ジェリーフィッシュTeenage Fanclubなどが登場。グランジと一定の距離を取りつつ、最後にはオルタナムーブメントに乗っかって、ウィーザーが大成功を収め、2000年代のFountains of Wayne辺りに繋がっていきます。

www.youtube.com

↑有名ですが、この界隈で一番好きな曲です。疾走感が素晴らしすぎる。

 

 www.youtube.com

キャッチーではあるものの、世間的に大ヒットを飛ばすでもなく。かつ「分かりやすい」のでコアな音楽ファンから下に見られがち。悪く言えばどこまで行ってもビートルズビーチボーイズザ・フー劣化コピーですが、いつの時代も喜んで時代遅れを引き受けてきた音楽であり、常に一定の需要を保ちながら生き残ってきたジャンルです。*4

 

【Girlfriend】

ものすごく雑にパワーポップの歴史を紐解きましたが、要するに言いたかったのは、Girlfriendが素晴らしいアルバムであり、このジャンルを語る上では外せないということです。

1991年というのはすごい年で、「Nevermind」「Ten」のグランジ勢に加え、「Metallica」「Screamadelica」「Loveless」に「Innuendo」と、バンド名を記す必要が無い名盤が各ジャンルで連発されていますが、それらとも全く劣らない90年代を代表する作品だと思います。

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マシュー・スウィートは86年にデビュー作「Inside」、89年に「EARTH」と2枚のアルバムをリリースしましたが、いずれもセールスはパッとせず。個人的に両作とも、丁寧ではあるが、パンチ不足っちゃそうなのかなーというのが印象です。

 

そこから生まれた会心の一作。何が良いって、音のバランスが素晴らしい。ざらっとしたギターに絡む甘いメロディ。歌を中心にしつつも、生々しい音作り。

また、中川五郎氏の日本版の解説に書かれていますが、1・2作目よりもドラムが格段にかっこよくなった。ギターはテレビジョンのリチャード・ロイドとルーリードのサポートだったロバートクインが脇を固めており、解説から引用すると、

要するにマシューはこのサードアルバムのレコーディングをドラム/ベース/ギターのもっとも基本的な“生の”ロック編成で貫いているのだ。…だからこそ“ドント・ビー・アフレイド・トゥ・プレイ・イット・ラウド”と自信を持って言える見事なロックアルバムに仕上がったのだと思う。

ということです。

歌詞はストレートなラブソングや失恋の歌が並んでおり、 2ndアルバム発売後、離婚や契約破棄など、色々と苦労してきた思いが滲みます。

 以下、各曲に一言ずつ。

1. Divine Intervention

ノイズが入ったり、一瞬曲が止まったりとサイケデリックな変化球風でありながらも、軸はシンプルなギターロック。

We are all counting on his divine intervention

「神聖な干渉を待つ」とは、ギターロックの可能性を指していると考えるのは深読みでしょうか。

2. I've Been Waiting

ギターの瑞々しいこと。イントロが一瞬スピッツの「群青」にも似ている。フォーク風味でサビのコーラスで和む。

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PVは日本のアニオタであるマシュー・スウィートの趣味が炸裂。好き過ぎて左腕に入れ墨まで入れたというラムちゃんが登場するカオスっぷり。

 3. Girlfriend

タイトルトラック。歪んだギターがキャッチー。後半のファンキーな展開が格好いい。

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4. Looking At The Sun

芋臭いAメロからすっ飛ぶサビに涙腺が緩む。ミドルテンポの優しいポップス。

5. Winona
ペダルスティールギターが歌いまくるカントリー調なバラード。女優Winona Ryderへの一方的な思いを語り続ける。

6.Evangeline

イントロから繰り返される、心地よいリズムギターと、ダサさとエモさの境界をうろうろし続けるリードギター、力強いドラム。最後のソロが泣ける。

Matthew Sweet - Evangeline - original - YouTube

曲終わりに、レコードのB面さながら、針の音がして入れ替え作業のSEが入る。

7.Day For Night

ブルージーなギターが響くラブソング。幻想的な感じ。

8.Thought I Knew You

歌い出しがR.E.MのLosing My Religionにも似ている気がする。もの悲しいアコースティックなバラード。 

9. You Don't Love Me

アコギにペダルスティールギターにピアノでカントリー調。マシュー・スウィートの繊細な歌声の良さが際立つ。

10. I Wanted To Tell You

軽快なアコギのカッティングから入る爽やかなギターロック。

11. Don't Go

もの悲しく歪むギターが印象的な別れの歌。

12. Your Sweet Voice

何重にも重ねたボーカルとコーラス。良メロ。ノスタルジックな雰囲気。

元々ここで作品は終わりだったらしく、もう一度レコードの音が。

13. Does She Talk?

ここからボーナストラック的な位置づけ。ブルージー。延々演奏が続くかと思いきやぶつ切り。

14. Holy War

珍しく大きなテーマが歌詞に。シンプルなロックナンバー。フレッド・メイハーのドラムがかっこよい。

15. Nothing Lasts

ほぼアコギ弾き語り。曲名はアルバムの元々のタイトル候補。切ない虚無感を美メロに乗せる。

 

文句なしの傑作ではありますが、ブックオフに行けば500円で並んでいます。一家に一枚、おすすめです。

*1:ここにネオアコっぽさが加わったのがギターポップ

*2:語源はザ・フーピート・タウンゼントが自分の音楽をそう呼称したことから来ているそう。Wiki情報。

*3:と言いつつ、チープトリックはすごく好きです。

*4:今の日本のメジャーシーンで言えばBaseBallBearは間違いなく代表的なパワーポップだと思っています。

【Base Ball Bear】光源 残酷なエバーグリーン

 2017年4月12日発売の7thアルバム。

小出祐介氏の世界観とメッセージが丹念に描き込まれた6th「C2」や5th「二十九歳」に対し、今回は詩も音もゆるーく脱力していて、リラックスして楽しめます。

もともと彼らが持っていたシティポップ感が、ギター湯浅の脱退によってよりストレートに出てきたのは間違いないでしょう。ギター縛りの中でギリギリを表現しようとする悲痛な攻撃性が印象深かったC2とは対照的です。

また、4th「新呼吸」以降、虚構の青春を演じるよりも「真顔の自分らしさ」を求めてきた彼らの世界観の延長線上にあるとも言えます。この真顔っぷりはやっぱり最近のベボベらしくて魅力的です。

 

音に関して言うと、とにかくベースの関根さんが雄弁。ドラムの繊細な音色との絡みで十分お腹が満たされるので、ギターが難しいことをやる必要がない。「ギターがおまけ」になったベボベの新境地。

具体例が思いつかないのですが、イケてるツーピースバンドってこういうことをやってるんだろうな、と思いました。あるいは、スリーピースで言えばやっぱりトライセラとかペトロールズとか。

 

ベボベと青春】

小出氏からすると、青春とは「突然クラスメイトから無視された学生時代」であり、彼らを見返したいとの一心で「偽の『青春』を歌うロックバンド」を続けることでもありました。*1

その精神の空虚さに小出氏が気付いたのが最初の武道館公演。「もう一度自分を見つめなおさなきゃ」と、3.5th以降のベボベは青春から遠ざかっていきます。

ところがC2の歌詞製作時に、再び青春のモチーフが現れた。そこで小出氏は、「どれだけ青春の清算を図ろうとも時間は戻せないし、あの頃に『起き得たこと』を再現することはできない」という考えに行き着く。

 

C2→ベスト盤という最高のタイミングで湯浅が抜けたことも含めて、過去と現在の自分を、あえて青春というフィルターを使うことで相対視する。

 

青春を取り戻したいとか、乗り越えようとするのではなく、消えない光を対象化し、今の自分との距離を描くことで、時間経過の奥深さを捉えようとする。それが、この「光源」です。

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【並行世界に思いを馳せる第二の青春】

C2より、「どうしよう」の一節。

青春が終わって知った 青春は終わらないこと

ジャケットが象徴するように、光源と今の自分が二世界に別れたまま「あり得たかもしれない自分」を想像する、大人になった主人公の視点が貫かれています。

大人になっても青春に悩まされ続ける。そんな自分を肯定も否定もせずに、有り体に描写しているとも言える。

このスタンスを希望と捉えることもできるでしょう。「二十九歳」でアルバム一枚をかけて立ち向かった「苦い青春の呪い」は、否定すべき物でも乗り越えるべき物でもなく、自分の存在そのものなんだと。そこに縛られる自分に歪さを感じる必要はない、という自己肯定なのかもしれません。

 

【青春に対する私見とアルバムの感想】

個人的に、青春とは「まだ出会っていない自分の理想」を追い求めることだと思っています。理想の女の子でも良いし、理想の音楽でも、理想の映画でも良い。

どこかに自分にぴったりの存在がいるはず。まだ自分が世の中の真実を見出せてないだけ、という妄想。


「社会で生きる」とか「大人になる」とは、そんな妄想に見切りを付けて、現実と向き合うことです。

 

とはいえ大人になっても、CDは買い続けているし、「これが人生ベストになるのかも」と期待しながら映画館に足を運ぶ自分がいる。これだけ過去の名作がアーカイブされた時代に、なぜ新作を聞くのかと言えば、それは、自分の理想形にアクセスできるかもしれないという開けた可能性に対して、年齢に関わらずワクワクできる行為だからです。

 

だから、自分にとっても小出氏が描く「青春の継続」というテーマは腑に落ちる部分もあります。

 

しかしながら、聞き込んでいくうちに次第に思い始めたのは、「いつまでも青春し続ける」ことは、案外簡単じゃないということ。大人になればなるほど、光源と自分との間にある現実の真っ暗闇を意識せざるを得ない。小出氏が武道館公演で感じたように、頭上の光ばかり見ていても、足元の現実は変わらないと。

 

自分自身、例えば音楽や映画に使ってきた時間とか、人生について考えを巡らせると、そこに潜む虚しさに全く無自覚ではいられないのも事実です。

そういう意味で、これからも確実に自分を縛り、人生の一部を浪費させ続けるという「青春」の「残酷さ」が、隙間多めの音や歌詞の中に眠っている気がする。

 

このアルバムが描き出す「永遠に手が届かない光源との距離感」=「空っぽの空間性」が、のんべんだらりとした「青春」を送る今の自分にナイフを突きつけているように思えて、切なく、苦しくなった、ということは付言しておきたいです。

言い換えると、「悲しいけど青春からは逃れられない」という大人のほろ苦さとかやるせなさが、時間経過と共にどこまでも広がる空間性として表現されている。

 

「いつまでも続くこと」を良くも悪くも受け入れてしまった大人のつらさ、「残酷なエバーグリーン」が形になった一作だと思います。

 

【結び】

「二十九歳」や「C2」は鑑賞後「こいちゃん大変だなー。がんばれー」という気持ちになりましたが、光源はまさに自分自身の問題として心に刺さりました。

 

二十九歳は色んなギターロックを詰め込んだ幕の内弁当ではあるものの、主題である「呪い」は小出氏の内面吐露的な側面が強く、大衆性から遠ざかっていったのは否めない。C2も、あまりの煮詰めっぷりゆえ、毎日聞くのはどう考えてもしんどい作品でした。

対照的に、今作は最近流行りのオシャレポップス、ドライブミュージックにも使えるようなサラッとした仕上がりです。

なのにちゃんとこうやって「刺さる」、これは表現としてなかなか高い領域に達しているんじゃないかとも思います。

 

 【各曲あっさりレビュー】

①全ては君のせいで

邂逅するはずのなかった「君」=「光」と、掛かるはずのない橋の上で一瞬すれ違うパラレルワールド。シンセが鳴りっぱなしで、曲全体が夢の中にいるような感じ。今作の主人公はこの経験に心を捕らわれ続ける。
Base Ball Bear - すべては君のせいで

現実と夢が交わるようで交わらず、でも最後のサビで本田翼=夢がベボベ側に現れて音楽に乗ってくれる、という映像。Darlingに出てくる琥珀色のリボンを付けている。

「本田翼が可愛いだけのPV」とよく揶揄されますが、今作のテーマを考えるとまさにそれで良いんだと思います。本田翼が象徴する「意味」は受け手がそれぞれ考えれば良くて、とにかく綺麗なイメージだけがこの歌の主人公のように焼き付けば十分だと。


ベボベの背中越しに光源が輝くこのアー写とも同じです。「自分がスターになれるわけじゃないが、光を求めてしまう」という目線。

 

②逆バタフライ・エフェクト

花を摘んで花束にする=過去の選択の集積。

「玉虫色の未来」という表現が良いです。エフェクトを多用しておらず、今の3人が鳴らせる音、という感じがします。トライセラっぽい。

自分こそだよ  運命を愛しな

突き放した感じもある。

決められたパラレルワールド

この現実をどう捉えて生きるべきか、ここから一歩先の「結論」は、このアルバムの中ではあえて示されない。

 

③Low way

「不思議な夜」のパラレルワールド。真夜中を一人で歩く。バンドの足腰の強さとホーンの絡みが良い。全然ギターいらねえじゃん、と思っていたら後半カッコいいソロが入ってくる。

 

④(LIKE A)TRANSFER GIRL

「Transfer Girl」のパラレルワールド。カッティングにエレピ。Bメロが特に好きです。サビも、昔のベボベにこの広がりは出せないよなあと思うとグッとくる。

 

寛解

ギターもドラムもベースもエレピも全部気持ち良い。ちょっとだけペトロールズな感じ。あるいは東京事変の「体」とか。今作だとこれが一番好きです。

 

⑥SHINE

「死ね」でもある、ストレートなギターロック。寛解からの落差は狙ってるんでしょう。1番で学生が青春の光に向かって突っ走って、2番で社会人になって絶望する。それでも最後に1番の歌詞を繰り返す。サビ頭の歌詞はどうしたって岡村靖幸を連想してしまう。

 

⑦リアリティーズ

辛い青春ゾンビからの開放。「桐島、部活やめるってよ」を思い出した。青春に苦しんでいた昔の自分に、大人になった自分が「正解はピラミッドの外にある」と諭す。

 

⑧Darling

もともとアルバムの「結論」めいた2番の歌詞があったのを削って、1番の繰り返しにしたらしい。小出氏自身が語っていますが、琥珀は時間の象徴。まさしく「あったはずの物語」に想いを馳せながら、幾億秒という時間を「全ては君のせいで」の中の「一瞬」に消化し直す綺麗なエンディング。

マテリアルな僕を琥珀色のリボンで撫でていく

あの日のように 一秒で

青春は自分の過去・現在・未来を貫く光のリボンであり、時の女神であると。新呼吸でも「同じことの繰り返し」という命題には挑んでいましたが、あちらは「1日」というスパンで人生を捉えていた。今はそれよりも圧倒的に余裕があって、懐の広さとか射程の長さに大人としての成長を感じる。

*1:「バンドを演じる」、それ自体も相対化してます、みたいな優等生な雰囲気があんまり気に食わず、正直この頃のベボベは苦手でした。もっと素直に歌えば良いのに、という。