Revueの日記

Revueの日記

歌詞の解釈やライブレビューなど、好きな音楽の話を主に書いていきます。Mr.Childrenが中心になると思います。

【藤巻亮太】北極星 キレが戻ってきた

 

2017年9月20日発売の3rdアルバム。

本人も自信作と言うように、初期~中期レミオのような伸びやかでキレの良い曲が復活しつつあります。

「完全復活」とまでは言わないですが、久しぶりの快作だと思います。先日ライブに行って熱が再燃したこともあり、現在改めてヘビロテ中。

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アイランド以降、「もう踏ん切れた」と発言しては「やっぱり迷いが…」と撤回し、ふらふらし続けてきた彼ですが、ここまで自信を持って音を鳴らせているのは本当に久しぶりなんじゃないでしょうか。

 

かつてレミオが好きだった人、ソロになって迷走気味の時期に離れてしまった人にも、今の藤巻氏が良いコンディションで制作できていることを知って欲しいなと思います。

 

本人もインタビューで自己分析しているように、1stアルバム「オオカミ青年」は、レミオロメンの反動として藤巻氏のダークな側面を全面に打ち出した「ソロらしい」作品でした。

そこで言いたいことは言い尽くしてしまって、空っぽになって3年半制作が止まる。で、長いトンネルを抜け、「レミオとの差別化を図る必要なんて無い。縛られる必要はない」と開き直った末に完成したのが2nd「日々是好日」。

 

今作はこれらの経験を起点に、1st・2ndの陰陽をバランス良く取り込んで、ソロになってから彼が続けてきた「旅」の風景も曲に結実させている。

 

悩んで立ち止まって制作もストップしてしまうのが藤巻氏が嵌る悪いパターンですが、今回は実に自然体で、のびのびとしています。ネットでインタビューを呼んでいたら、小林武史氏からも至言をもらっていたようです。

藤巻亮太「北極星」インタビュー|変わるべきは他人じゃなくて自分 自然体で生まれた「北極星」 (3/3) - 音楽ナタリー 特集・インタビュー

今回このアルバムに向かう直前ぐらいの時期に「お前はあまり理屈っぽくならないほうがいいよ。お前はさ、関東近郊の山のあるところで育って、でもRadioheadが好きでさ。ああいうよくわかんない感じがいいんだよ。あまり“洗練”に向かうなよ」と言われました。

フォーキーで田舎くさい雰囲気を漂わせながらも、イエモン的なポップロックをベースにレディへとかビョークまでもを混ぜ込んだのがレミオロメンであり、藤巻亮太の世界観です。

 

ソロアルバムも3作目ともなれば色んな作業もスムーズになってくるし、自信も付いてきたんでしょう。彼らしさが存分に感じられる仕上がりになっています。正直、私もこの間何度も心が離れかけましたが、よくぞここまで戻してくれたと嬉しく思います。

 

ベースに前田啓介、ドラムに神宮司治、編曲に小林武史を起用する曲もあり、本来の藤巻氏が力を発揮できるメンツをうまく当て込みながら素直に曲と向き合っている印象です。(作品に自信があるからこそできるオファーでしょう)

 

その意味で、2ndの延長線上にあるとも言える。ただ、2ndは底抜けに明るく聞こえるものの、ちょっと深みに欠くというか、個人的には物足りず、正直私はすぐ聞かなくなってしまいました。

 

2ndは1st制作後の暗いトンネルを抜けた先にある光を描いているけれども、視界に映るのは明るさばかりで、全体に景色が白んでいる。そうした印象が拭えないのが原因だと思います。前向きではあるけれど、細かな具象を描ききれておらず、薄味ゆえに飽きも早かったんだろうと。

 

今作はそこから一歩進んで、トンネルの先の風景を過不足なく描けていると感じます。東京のビル群、山梨の盆地と山と果樹園、雷が宇宙へと伸びていくチベットの山々。これらの空気を薄っぺらい言葉に頼らず、地に足付いた音楽へと変換できている(詩にはまだまだ不満はありますが)。レミオロメンを褒める時によく使う「土の匂い」がする作風がちょっとだけ戻ってきたかなと。

 

もう一つ、嬉しいこと。アフリカやチベットに旅行ばっかり行っていた藤巻氏が、ようやくその経験をストレートに曲としてアウトプットしてくれたことです。

彼の目で見たチベットの風景がどんな曲になるのか、ずっと楽しみにしていたのに遅々として制作が進まず、「行くのは良いけどさっさと曲書いてくれよ」とモヤモヤだけが増す状況になっていましたが、やっとやっと形になった。クオリティ的にも、待ってました!という感じです。

 

基本的にドラムとホーン以外はほとんどの演奏を藤巻氏自身が担当し、編曲も手掛けています。

【各曲レビュー】

1. 優しい星

宮司氏がドラム。東京のスタジオでレコ―ディング中、ビルの屋上で空を眺めたことから生まれた、とのこと。

低い藤巻氏のコーラスから、穏やかなアコギのアルペジオが流れ始める。

ねえ 君が思うような男じゃないけど
大切な人を守れるくらいになりたい
心の砂漠に水を与えたら
優しさの種を蒔こうか

レミオロメンの1stアルバムから、朝顔のサビを連想させる歌い出し。

砂漠を歩きましょう 月は砂をなじる 一人で歩けるさ 朝顔の種を蒔き

朝顔は簡単に言えば「心に潤いを保って、孤独な砂漠でも夢の花を咲かせ続けたい」という歌です。その思いへの原点回帰との見方もできると思います。

珍しく「男」と性別を特定していますが、男女間のラブソングというより藤巻氏本人を歌っていると捉えるのが自然かと思います。

セメントの街に花を咲かせたら
ビルの屋上で 空を抱きしめ
涙が出るほど 悲しい日だって
一人じゃないよな 優しい星よ

「一人でいる悲しみ」を明言したのは新しい。日々是好日と違い、現状認識がしっかりしている。

冬の訪れを誰も避けられず
春の温もりが心にしみる
人はそれぞれに帰る場所探し
一人きりの部屋優しさの影

時関経過と、冬の訪れの受容。でもそこにあっさり絶望しないのが、今回はひと味違うなと感じさせる一節。

あの頃はバカすぎて
人の痛みも分からなかったよ

4月晴れの中一人見た桜
華やぐ世界が眩しすぎたけど

冬を越えて一人になってしまった藤巻氏。彼にとっての華やぐ世界が何を指しているのか読みにくいですが、桜は「手にできない移ろいゆく美しさ」なんでしょう。

2. Blue Jet

チベットで生まれた曲。ギターもブラスも全力で鳴りまくる、今作最大のハイライトです。ベースは前田氏。

タイトルは非常に高い空でのみ発生する、雷が宇宙に向かって落ちていく現象を意味するそう。近年ようやく写真の撮影に成功したばかりで、メカニズムはよく分かっていないらしい。曲からは人知を越えた壮大さ・ワクワク感や不思議な民族音楽のテイストが感じられます。

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歌っているのは音楽という人と人を繫ぐ「橋」に関することです。

藤巻氏は粉雪での大ブレイク以降、大衆の共感を大切にすることと、自分の表現を貫くことの矛盾について、不器用なまでに悩み倒してきたアーティストです。

共感を吹っ切って作ったのがオオカミ青年であり、その反動が日々是好日。

この曲はようやくその足踏みから一つ進んだ結論が提示されています。

欲望が行きついて 何になった
悲しみが過ぎ去って 誰になった

声を届かせて 青い空の下
やがて悪夢から 覚めて雨あがる
風が吹き去って 人が立ち去って
何も残らない 自由を満たして

喪失感の中、悲しみの中でも歌うことを「自由」と受け止める。

つくりかけの橋みたいな気持ちで
濁流を受けている心と身体
果たすはずの約束 待たせてる人
みんなみんなそれぞれ 違う橋を渡ってしまって
とり残されたとして

人は通らない それで構わない
ただここに生きて 橋を架けてゆく
雲が立ち込めて 犬も吠えなくて
誰の気も引かぬ 自由を満たして

この2番最高です。半端なまま人を待たせている橋とは藤巻氏自身。人を繫ぐでもない、誰の気を引く物でもない自由を肯定してしまう。

空はこんなに広く 誰のもんでもなく
寂しさなんてなく 優しさしかなく
だからせめて

声が届くなら 雪解けのような
見向きもされない 温もりになりたい
使い捨てられた 代わりの効かない
本当の愛を 呼び醒ませ Blue Jet

雪解けのような自然な暖かさ・優しさを与えたい。でもそのためにはまず、自分自身が代わりの効かない存在として、もっともっと自由でいなくてはいけない。

立ち上がれよ Blue Jet
蘇れよ Blue Jet
天と地を結んで
悪夢を終わらせて

風が止まぬ間に 誰も知らぬ間に
愛を身にまとい 突き抜けろよ Blue Jet

雷=電子=音楽の橋。橋は人と人、過去と現在を繫ぎ、悪夢を終わらせてくれるはず。

共感に縛られすぎず、自分らしい音楽を続ける。それでも人は付いてきてくれるんだと確信できています。 

 

湧き出るものを信じる、藤巻亮太 クリエイティブ願望溢れた新譜/インタビュー | MusicVoice

音楽を作ることは、そういう未来よりも、今その橋を架けようとする切実な想いや、なぜ架けたいと思っているのか、そういう自分の想いと向き合っていくことなんです。結果として、誰も渡ってくれなければ僕は失業ですけど(笑)。そういう怖さもありながら、自分を信じて進んで行く。結局それしか出来ないのかなと思いながら書きました。そういう覚悟みたいなものを、この曲を作りながら決めました。

これまたネット上のインタビュー記事の引用ですが、よく言った藤巻!と叫びたくなります。

3. Have a nice day

壮大な2曲から急転直下してお気楽ポップソングに。「世界の果てで泳ぐオスとメスのクジラ」というフレーズを言うがために発展していったそうです。

跳ねるように刻まれるギターと軽快なブラスのイントロが印象的。ベースは前田氏。

良い意味で適当な歌詞と耳に残るサビと動き回るベース。どこかレミオっぽさもあって、懐かしさ漂う一曲です。

春色のキスをしようよ いつもの朝とはぐれて

愛の口づけしなきゃ 海の底で僕ら溺れてしまう

キス、口づけがテーマになっています。やはり藤巻氏にとって「理想の世界」=「春」の図式が成り立っているようです。

思い出と未来のあやふやなキスをしようよ

今初めて出逢ったような

そのキスは時間をも超えると。アコギとベースだけになって、メロディアスなベースが一気に表に出てくるのがとても楽しい。

4. another story

編曲・ピアノ小林武史、バイオリン沖祥子というある意味落ち着く布陣。

静かなすれ違い、あり得たかも知れない2人の未来を想像しながらも、悲しみに沈んでいくバラードです。「恋の予感から」「夢の蕾」系だと本人談。ピアノの音の深みはさすがだなあという印象。

冬の夜の不安定感を描かせたら藤巻氏の右に出る者はいないと思うんですが、その系統にはあります。特にAメロが良いです。ちょっとだけ「オリオン」っぽい。サビはやや平たんな気がしますが…。2013年ごろからずっとライブで歌ってましたから、本人的にはお気に入りなんでしょう。

もう会えないね 電話越し

月が海へ落っこちて 夜は一層暗くなって

眩しすぎる朝に耐えられぬまま

僕は溶けてしまった

受話器越しの会えない2人の不安と言えばレミオロメン1stシングル「電話」を連想します。「電話」の先にあった別れ、なのかもしれません。

5. マスターキー

前曲でちょっとブルーな気持ちになるんですが、そこから奮い立たせるような藤巻氏の叫びとアルペジオ

この曲は世界中の景色を見つめてきた藤巻氏の旅の曲であり、藤巻氏が旅で掴んだ新境地、すなわち「周囲の状況(鍵穴)が変われば、自分らしさに固執するのではなく、自分がマスターキーとなって道を切り開けばよい」との思いが描かれています。Blue Jetに次ぐ重要な曲でしょう。ライブでもとても良かったです。

Aメロで言葉をフォーキーに詰め込んでいます。あふれ出る感情と対比されるような、足腰の強いバンドサウンドと、細かく切って歌うサビ。通底するのは藤巻氏の淡々とした決意です。これもベースは前田氏。

鍵穴に合わすよに 何度も自分を変えていける

ドアの向こう何がある

マスターキーそれは心の中

鍵を開けて世界へ出よう

胸の永遠を陽に晒し

青の塊を赤く染め

黒を研げ白を野に放て

表も裏も自分の顔

ここで言いたいことは言い切ってるなと思います。胸の永遠ー自分らしさを晒す。そのためには青を赤くすることもある。オオカミもヒツジも、暗さも明るさも捨てず、そのままで解き放ってしまえばいい。

冬の中で落としてしまった 心の鍵

やっと見つけたら 鍵穴の方が 変わっていたのさ

何を見ている? ふるいパラダイム 

こちらは、粉雪のヒットから自分を見失う中で生まれた「パラダイム」という曲の歌い出しです。この曲では鍵を無くして鍵穴が変わった後、心をノックする音に従うようにドアを開け放ったら一気に雪が吹き込んで景色を一変させた、それでも元の自分は変わらないはずだ、という形で心境をまとめています。

olsen-revue.hatenablog.com

マスターキーと比べると、外的な変化に受動的に対応しようとしていたパラダイムの頃から、自ら道を切り開こうとする藤巻氏の精神的な成長が伺えます。藤巻氏は「本来20代のうちに経験すべきだった苦労を、レミオの早い成功によって味わわずに済んでしまった分、30代で苦しんだ」と語っていますが、その苦しさを越えた思いが顕著に現れていると思います。

 

6. 波音

マスターキーでリセットされた感情からスッと聞こえてくるのは、「love love love」なんてコーラスすら入ってくる、とても前向きで優しいラブソング。

単純にメロディとアレンジが素晴らしい。3月9日などに代表されるように、ギター主体のバンドサウンドでありながらきちんと大衆性を保てる藤巻氏の才能が炸裂しています。この曲はether辺りに入っていても全く遜色ないと思います。

待ち人の名も過ぎ去りし日も忘れかけた頃

出会いは眩しい 太陽の贈り物

再出発です。

会いたい君と夏の海と空

編み込んだメロディーみたいにキスをしよう

永遠だけが寄せては返して

波音みたいに一つになろう

この歌詞のセンスはまさしく藤巻節だなあと。

当然、レミオロメンの「波」への意識はあるのでしょう。

過ぎ去りし日を 見つめ なくしたものばかり見ようとして

日が暮れていく 影が伸びていく

寄せては返し 返してはまた寄せて

二人はまるで愛のように返した

他にも「夏 コーヒー」とか「雨上がり」「愛の木を育てましょう 水をあげて」等、初期っぽいフレーズが使われています。

7. go my way

暖かく前向きな気持ちになったところで、先行シングル。レコードB面の始まりっぽい。ライブの1曲目の定番になりつつあります。紆余曲折を全て今の自分だと受け止めようとする曲。これもanother story同様、サビがちょっと弱いか。大サビのへんてこ感は好きです。
遠回りもしたけど 回り道もしたけど
ここまでの道のりが今の僕を作ってる
go my way go my way

藤巻亮太 「go my way」-動画[無料]|GYAO!|音楽

8. 紙飛行機

今作唯一とも言っていいアップテンポなギターロック。ソロ1stの「キャッチ&ボール」にも似ています。ドラムに神宮司氏。相変わらず音が繊細かつ楽しそう。

レミオロメン10周年記念の「雨上がり」のリアレンジにも顕著でしたが、非常にクリアなギターサウンドが展開されています。田舎感・オルタナ感皆無な様子が、レミオロメンのバンドの変化とも重なる。

昔のレミオロメンが好きな自分からすると、正直ちょっと物足りないんですが、こういう音って昨今の流行りなんでしょうか?

歌詞的には、今の自分と、過去の友人へのメッセージ。次の北極星への伏線になっています。

紙とペンで夢を描いたら メロディーの向こう 風をつかまえて

どこか遠くへ連れてって欲しかった

紙飛行機飛んで飛んで

故郷の街が小さく見える

みんな元気かい 俺は変わった

胸のざわめき その先を行くのさ

紙とペンだけで音楽を始めた頃の思い。山に囲まれた山梨時代を振り返って「あの山の向こうには何があるんだろうと思っていた」という藤巻氏。未知のものへの期待感を音楽に込めていた若々しい衝動を、紙飛行機に喩えています。

同じように戦っているあいつの顔を思い出したよ

紙とペンで夢描くよ

そしていつか会いに行くよ

それぞれの道を歩む前田氏や神宮司氏。時間は過ぎても相変わらず紙とペンで戦っている藤巻氏が、会いに行くと宣言する。

9. 北極星

曲作りに煮詰まって、試しに山梨の公民館を借りてみたら地元の空気感に影響されて生まれたという曲。完成後、前田・神宮司両氏に音源を送ったそう。今の藤巻氏の2人への思いが詰まっている。

僕らが過ごした時間は永遠だよ

終わりが来たとしてもそれは始まりの意味

真っ直ぐじゃないけど 全部正しくもないけど

僕が選んだ道をこれからも歩いてゆく

橋のない川を 船のない海を 風のない空を 光のない森を

越えてゆける 勇気をほら 僕らは心に宿して

橋のない川を越える決意はBlue Jetでも歌っていましたが、その勇気を最後の最後に「僕らは」と持ってくるのが熱い。

藤巻亮太 「北極星」-動画[無料]|GYAO!|音楽

 

果たして、今アルバムがレミオロメン復活への布石なのかは分かりません。オオカミ青年リリース後にも再結成を検討したそうですが、その時と比べても今のソロとしての充実度は段違いです。そんな今の状況で、再結成するのが藤巻氏にとって最良なのかと言えば、先日の昭和女子大での安定したライブを見ていても、ちょっと疑問なのかなというのが私の感覚です。

 

10.愛を

美メロと孤独感に満ちた歌。すごくキャッチーで、ドラマのエンディングとかにも合いそう。正直アルバム初聴時は、北極星からの流れでちょっと泣きました…。

エフェクトの掛かったギターイントロから、アコギ一本でとうとうと歌う寂しさ。次第にギターが絡み、サビで藤巻氏を支えるように響く河野圭氏のピアノがまた泣ける。

ずるい自分をさらけ出して 誰からも嫌われてしまいたい

偽物の優しさでは 夢から覚められない僕ら

自分の中の毒を認識しながら、

サヨナラはせめて愛の中

苦しいのは恋が美しいから

勝手な人生を生きるより

愛を 愛を 愛を

みんなみんな思い出になって どれもこれも届かなくなって

せめて愛に満ちたサヨナラを。「せめて」に苦しさが滲んでいて良い。

11. Life is Wonderful

もっと綺麗に終われたとも思うんですが、アルバムラストにあえてぶっ込んできています。

打ち込みの3拍子と浮遊感のあるギター。穏やかな曲調を壊すように、間奏にはcreepばりの「ガガッ」が入っています。眠り=夢と現実の狭間の奇妙な感覚と、それでも揺るがない思いを歌にしている。

正直か嘘か 昼か夜の闇か 運命を決めるのは今の僕ら自身

胸の奥の夢と希望 表側へ開く扉

そこで会いましょう 新しい君と僕と世界で

日々色んなニュースがあって曜日も変わるのが「世界」だとして、僕らも日々変わっていこうというマスターキーの主題を、日常に置き換えている。

 

Bonus Track(初回盤のみ)

12. LIFE

ツール・ド・東北のテーマソング。「応援しているつもりの人に励まされる」という大会のテーマが歌詞のコンセプトにあるそう。ミュージシャンとファンの関係もそうだよなあ、と思いつつ。

日々是好日(アルバムでなく曲の方)の時も思いましたが、この手のシンプルなポップソングは、藤巻氏くらいならサクッと書けるんだろうな、と感じます。良い曲。

感情線を そして生命線を やがては運命線をも書き換えて

なりたい自分に近づいていくんだ 僕たちは

考え方→行動→運命。「深呼吸」を思い出します。

領海線を そして国境線を

やがては僕とあなたを隔てる線をすっと消しながら

藤巻亮太 「LIFE」(ツール・ド・東北 公式テーマソング)-動画[無料]|GYAO!|音楽

13. 3月9日

「応援」をキーワードに、タブゾンビにブラバンみたいなことをやらせるという企画。

この曲に関しては詳しい説明は不要でしょうが、新アレンジで「3月9日にはこんな側面もあったのか」とちゃんと感じられました。「この曲を一番知り尽くしているのはやっぱり本人なんだな」と改めて感じました。

 

「完全復活」のためには不満点も書いておきます。

・歌詞

「ありがとう」「君が好き」言い過ぎ問題。風のクロマからずっとそうですが、決めのポイントにいわゆるJ-POP的なストレートな歌詞を配置することが多く、どうしても浮いている感じが否めない。ここはもう変えようがないのでしょうか。

・強烈な曲がない

ハロー流星群、月食、かすみ草。レミオ時代だったら確実にお蔵入りしていたであろう、聞き手も引いちゃうくらいヘビーな楽曲が入っていないです(Blue Jetにちょっとその香りがするくらい)。この手の曲は「突然降ってくる」らしいので、意図的に抜いたというよりも、今回たまたま生まれなかっただけだとは思いますが、せっかくのソロアルバムなのでやっぱり欲しかったなと。*2

・キャッチーなシングルがない

go my wayが配信限定の先行シングルですが、明らかに地味。北極星もどちらかというとファンに染みる曲ですし、分かりやすいテーマソングがあってもよかったと思います。

キャッチーさに関しては、LIFEと(当然ですが)3月9日が突き抜けていると思うので、その意味でボーナストラックも含めた13曲入りだと捉えると全体のバランスは多少良くなります。*3

*1:こちらのサイト(https://earthreview.net/gigantic-jet-lightning-over)からの拾い物です。

*2:日々是好日で明らかに浮いているかすみ草をこっち収録でも良かった気も、というのは結果論でしょうけれども。

*3:オフィシャルの番号表記が3月9日まで通しで書いているのも、案外そんな意図があるのではと勘ぐったり。