「奏」がラジオで流れまくってた頃、ツタヤに行ったら当時出たばかりの「ふれて未来を」を見つけて、なぜかそっちだけ借りて帰ったのが私のスキマスイッチとの出会いです。
一聴で軽快な曲調とバランスの良いアレンジ、そして特徴的なボーカルに心掴まれ、数か月後には「冬の口笛」の繊細な音作りに「こりゃ当たりだなあ」なんてニンマリしていたら、全力少年が大ヒットして、あっという間にスターの道を歩んでいきました。
そんな訳で、その頃からCDは買い続けるくらいのファンなのですが、最近の作品に思う所があったので書いてみます。
【コテコテしすぎではないか】
彼らは常に新しい表現を作品に取り入れて、音楽の幅を広げようとしてきたアーティストです。ミュージシャンシップという言葉がしっくりくるなあと常々思っています。
その魅力が一番分かりやすく出ているのがライブで、毎度毎度あっと驚くようなアレンジを入れてきます。この曲にこんな可能性が、彼らにはこんな引き出しがあったのか、と聞き手をびびらせてきます。
4thアルバム「ナユタとフカシギ」までの楽曲は比較的シンプルで、まさしくポケットミュージックのような気軽さが光っていていました。ある種淡泊にも聞こえる楽曲が、ライブで別の色を堪えて輝きまくるのがスキマスイッチの面白さだと思っていました。
潮目が変わったのは5thアルバム「musium」だと思っています。1曲目の「時間の止め方」のえぐるようなベース。溢れるライブ感。これがスキマなのかと。彼らのライブを再現するかのようにきっちりと作り込んだ楽曲は、当時は大変新鮮でした。とにかく味が濃い。
でも、ライブ盤ってたまに聞くから良いんだと思います。物足りないくらいの原曲があってこそのライブバージョンだろうと。
musium、6thアルバム「スキマスイッチ」と、じわじわとセールスを落としてきました。たぶん、理由の一つはアレンジの問題で、多くの楽曲が気軽さというよりも、「スキマのライブに来るくらい好きな層」が喜ぶようなきっちりした仕上がりになっている。これがライトなファンを入りにくくしている気がするのです。
無論楽曲は昔と変わらず素晴らしいのですが、マニアックというか手癖が強すぎるというか。誰もがサクッと聞ける「全力少年感」がなくなってきたと思います。ライブの良さが曲作りまで浸食してきて、悪い意味で差が無くなってきた。
もともとこだわり抜いた曲を作ってきた彼らですが、その捻りを聞き手に感じさせずに楽しませる技術も、魅力の一つだったはず。
J-POPを支える中堅どころとして、まだまだ彼らの役割は残っていると思います。職人的な音楽家であると同時に、大衆に開けていることを諦めず、もう少しシンプルな曲が聴けないものかなあと感じます。
(なお、文句は言いつつも、musium以降で言えば「ラストシーン」と「パラボラヴァ」は私が思う「スキマスイッチ」らしい素晴らしい出来だったと思っています)
【ミスターカイト/リチェルカ】
そんなことを2年ぶりのシングルを聴きながら考えておりました。
4曲ともシングル扱いで、タイアップも3つ付いているなかなか豪華な作品です。
「スキマスイッチ」制作時にシングルで切ろうとした「ゲノム」の進化形。
打ち込みから入ってフォーキーに言葉を詰め込む。サビで大きく展開し、冒頭に戻る構成。 サビのメロディは、俯瞰視点になる歌詞と合わさって、アップダウンを付けながら空に舞い上がる感じが綺麗に描けている。村石雅行氏のドラムがめちゃくちゃ格好いい。
でもやっぱり変化球という印象。王道ではないよなあ。
その他思ったこと
・途中で曲調の一変するミスターカイト。タイトルはそのまんまビートルズの「Being for the Benefit of Mr. Kite!」から持ってきているのだろうか
・車両でつり革を見つめる→上を見る→カイトのイメージが広がる
・最後のピアノの一音が変化の予兆っぽくて良い
②リチェルカ
テレ東の連続ドラマ『警視庁ゼロ係』の主題歌。
コッテコテですが、シングルらしくストリングスにブラスに、ど派手でありながら全体の音のバランスは整えつつ、その上にややこしいメロディが乗っている。ハイレベルだなあと思う。
この曲も村石氏のドラムがエモい。
歌詞は人生をRPGに喩えたもの。勢いの良さと韻踏みに配慮しながらもストーリーが転がっていくのはスキマらしい。
③さよならエスケープ
マイナビ転職のCMソング。
コンセプトは「ライブサウンド、バンドサウンドの中にカラフルさを入れ込む」ことだそう。
そういう意図なら仕方ないのかもしれないけれど、音をちょっとずつチューンアップした結果、前半で書いてきた様に、彼らの小品的な魅力を損なってしまっている気がする。夏雲ノイズの頃のアレンジで聞いてみたいというのが正直な感想。
サビやAメロの歌い終わりに聴き覚えのあるフレーズが散見される気が。
最後の「時計はもう動いてる」の余韻の残し方は好きです。
「一休み」「ため息深く一つ」「一筆」「もう一息」など一が多いのはスタートの歌だからだろうか。
④ココロシティ
メーテレ開局55周年の曲。
すごく普通で、特に言うことなし。